半導体というと、シリコンウエハーの上に作られた小さなチップを思い浮かべる人が多いかもしれません。
ただし、完成した半導体チップを電子機器で使うには、細かな端子の接続や、チップの保護・放熱を考える必要があります。一般的には、そのために半導体パッケージが使われます。
半導体チップは非常に小さく、外部からの衝撃や水分に弱いうえ、チップ上の端子も細かいため、そのままではプリント基板と接続することが難しいからです。
そこで必要になるのが「半導体パッケージ」です。
半導体パッケージには、チップを保護するだけでなく、電気信号や電源を外部につなぎ、動作中に発生した熱を逃がす役割があります。
さらに近年では、複数の半導体チップやHBMを1つのパッケージ内に配置することで、半導体全体の性能を高める役割も担っています。
この記事では、半導体パッケージの役割や内部構造、ワイヤボンディングとフリップチップの違い、代表的なパッケージの種類、2.5D・3D実装などについて初心者向けに解説します。

半導体パッケージとは
半導体パッケージとは、半導体チップを保護し、外部のプリント基板と電気的に接続するための構造です。
半導体製造の前工程では、シリコンウエハーの表面にトランジスタや配線を作ります。その後、完成したウエハーを切り分けることで、1つずつの小さな半導体チップが作られます。
切り分けられた半導体チップは「ダイ」または「ベアダイ」と呼ばれます。
この段階では、まだ外部を覆う樹脂やケースがなく、基板に接続するための大きな端子もありません。
そこで後工程では、ダイをパッケージ基板やリードフレームに取り付け、ワイヤやバンプを使って電気的に接続します。その後、樹脂などで封止し、外部端子を形成します。
私たちが電子機器の基板上で目にする黒い四角形の部品は、半導体チップそのものではなく、チップを内部に収めた半導体パッケージです。
つまり、次のように考えると分かりやすいでしょう。
半導体チップは、計算や記憶を行う本体
半導体パッケージは、チップを守り、外部とつなぎ、熱を逃がす仕組み
パッケージは単なる入れ物ではなく、半導体を実際の電子機器で使用するために欠かせない部品なのです。
半導体チップに接続・保護の仕組みが必要な理由
半導体チップの表面には、非常に微細なトランジスタや金属配線が作られています。
このようなチップをむき出しのまま扱うと、外部からの力や水分、ほこり、静電気などによって壊れる可能性があります。
また、チップ上の接続端子は非常に小さく、間隔も狭くなっています。一方、電子機器で使われるプリント基板の配線や端子は、チップ上の端子ほど細かくありません。
そのため、チップ上の小さな端子を、プリント基板上の大きな端子へ変換する仕組みが必要です。
さらに、半導体チップは動作すると熱を発生します。特にCPUやGPUなどの高性能な半導体では、発生した熱を効率よく外部へ逃がさなければ、温度上昇によって性能が低下したり、故障したりする可能性があります。
これらの問題をまとめて解決するのが半導体パッケージです。
なお、ベアダイを基板へ直接実装するCOB(Chip on Board)などの方法もあります。その場合も、実装側で電気的な接続や保護、放熱の仕組みを用意します。
半導体パッケージの4つの役割
半導体パッケージには、大きく分けて4つの役割があります。
半導体チップを保護する
1つ目は、半導体チップを外部環境から守ることです。
チップを樹脂やセラミックなどで覆うことで、衝撃、振動、ほこり、水分などがチップに直接触れることを防ぎます。
ただし、樹脂で覆えば完全に水分を遮断できるわけではありません。使用環境や求められる信頼性に合わせて、パッケージの材料や構造が選ばれます。
チップとプリント基板を電気的につなぐ
2つ目は、半導体チップと外部のプリント基板を接続することです。
半導体チップ上の小さな端子から、ワイヤやバンプを通してパッケージ内部の配線へ信号を送ります。その配線をパッケージ外部の端子につなぐことで、プリント基板との通信や電力供給が可能になります。
フリップチップ型のBGAパッケージでは、電気信号がおおむね次の経路を通ります。
半導体ダイ
→ バンプ
→ パッケージ基板内の配線
→ はんだボール
→ プリント基板
パッケージ基板は、チップ側の細かな端子間隔を、プリント基板側の広い端子間隔へ変換する役割も持っています。
半導体チップの熱を逃がす
3つ目は、半導体チップで発生した熱を外部へ逃がすことです。
CPUやGPUなどでは、ダイの上に熱伝導材料を配置し、その上にヒートスプレッダを取り付けることがあります。
熱は次のような経路で外部へ移動します。
半導体ダイ
→ 熱伝導材料
→ ヒートスプレッダ
→ ヒートシンク
→ 周囲の空気
この経路の途中に熱を伝えにくい部分があると、チップの温度が上昇します。
そのため、パッケージを設計するときは電気信号の流れだけでなく、熱の流れも考える必要があります。
基板へ取り付けやすくする
4つ目は、小さな半導体チップを扱いやすい部品にすることです。
むき出しのダイを一般的なプリント基板に直接取り付けるには、高精度な装置や高度な実装技術が必要です。
パッケージ化して外部端子の大きさや間隔を整えることで、電子機器の組立工程で扱いやすくなり、故障した部品の交換や検査もしやすくなります。
半導体パッケージの内部構造
半導体パッケージの構造は種類によって異なりますが、主に次の部品から構成されています。
半導体ダイ
ダイは、トランジスタや配線が作られた半導体の本体です。
CPU、GPU、メモリ、センサなど、製品によって内部に作られている回路が異なります。
リードフレームまたはパッケージ基板
リードフレームは、金属板を加工して作られた端子とチップの支持部材です。QFPやQFNなどで多く使われます。
一方、BGAや高性能な半導体では、内部に多層配線を持つパッケージ基板が使われます。
パッケージ基板は、多数の端子を効率よく配置し、チップからプリント基板へ信号や電力を運びます。
ワイヤまたはバンプ
ワイヤやバンプは、半導体ダイとリードフレーム、またはパッケージ基板を電気的に接続します。
細い金属線でつなぐ方法がワイヤボンディング、小さな突起状の電極でつなぐ方法がフリップチップです。
封止樹脂
封止樹脂は、半導体ダイや接続部分を外部環境から保護します。
一般的な黒い半導体パッケージでは、エポキシ系の樹脂などが使用されています。
外部端子
外部端子は、半導体パッケージとプリント基板を接続する部分です。
パッケージの側面から伸びる金属端子や、パッケージ下面に並べられたはんだボールなどがあります。
ワイヤボンディングとフリップチップの違い
半導体ダイとパッケージ側を接続する代表的な方法が、ワイヤボンディングとフリップチップです。
ワイヤボンディング
ワイヤボンディングでは、ダイの表面にある電極とリードフレームなどを、細い金属線で接続します。
長年使われている成熟した技術であり、比較的低コストで量産しやすいことが特徴です。
一方、基本的にはダイの外周に沿って電極を配置するため、端子数を増やすとダイの周囲に多くのスペースが必要になります。
ワイヤによって配線距離も長くなるため、非常に高速な信号を扱う用途では、電気抵抗や寄生インダクタンスなどの影響が大きくなります。
フリップチップ
フリップチップでは、ダイの表面に多数のバンプを形成し、ダイを裏返してパッケージ基板へ接続します。
ダイの外周だけでなく、表面全体に端子を配置できるため、多端子化に向いています。
また、ワイヤを使わず短い距離で接続できるため、高速通信や大電流を扱うCPU、GPUなどに適しています。
ただし、バンプ形成や位置合わせには高い精度が必要です。ダイと基板の間には、接続部分を補強するアンダーフィルと呼ばれる樹脂を充填することもあります。
ワイヤボンディングとフリップチップは、どちらかが常に優れているわけではありません。必要な性能、端子数、コスト、製品サイズに応じて使い分けられます。
DIP・QFP・QFN・BGAの違い
半導体パッケージには多くの名称があります。ここでは、外部端子の形や配置による代表的な分類を見ていきましょう。
DIP
DIPは、パッケージの左右から棒状の端子が伸びた構造です。
プリント基板に開けた穴へ端子を差し込んで取り付けます。扱いやすい一方、基板上で広い面積を使用するため、小型化や多端子化には向いていません。
QFP
QFPは、四角いパッケージの4辺から細い端子が伸びています。
プリント基板の表面へ取り付けるため、DIPより小型化しやすく、多くの端子を配置できます。
ただし、端子数が増えるほど端子間隔が狭くなり、端子が曲がりやすくなるという課題があります。
QFN
QFNは、外側へ長く伸びる端子がなく、パッケージ下面の周辺部に接続端子が配置されています。
QFPより小型・薄型にしやすく、中央の露出した金属部分から熱を逃がせる構造もあります。
BGA
BGAは、パッケージの下面にはんだボールを格子状に配置した構造です。
パッケージの4辺だけでなく、下面全体を使って端子を配置できるため、多端子化に適しています。
CPUやGPUなどでは、ダイとパッケージ基板をフリップチップで接続し、パッケージ基板とプリント基板をBGAで接続するFC-BGAが使用されます。
ここで注意したいのは、BGAとフリップチップは同じ分類ではないという点です。
- BGA:パッケージとプリント基板をつなぐ外部端子の配置
- フリップチップ:ダイとパッケージ基板をつなぐ接続方法
- FC-BGA:両方を組み合わせたパッケージ
このように分類の基準を分けると、半導体パッケージの名称を理解しやすくなります。
パッケージ技術が進化してきた理由
半導体パッケージは、半導体の高性能化や小型化に合わせて進化してきました。
DIPでは側面から伸びた端子を基板の穴に差し込んでいましたが、部品を小さくするためにQFPなどの表面実装型が普及しました。
しかし、QFPは端子をパッケージの外周にしか配置できません。端子数が増えると、パッケージを大きくするか、端子の間隔を狭くする必要があります。
そこで、パッケージの下面全体に端子を配置できるBGAが利用されるようになりました。
さらに、チップの端子数や通信速度が増えると、細いワイヤを使った接続では配線距離が問題になります。
ダイを裏返し、多数のバンプでパッケージ基板と直接接続するフリップチップを使うことで、配線を短くしながら多くの信号や電力を伝えられるようになりました。
つまり、パッケージ技術の進化は次の課題と関係しています。
- 電子機器を小さくしたい
- より多くの端子を配置したい
- 信号の配線距離を短くしたい
- 大きな電流を安定して供給したい
- 半導体から発生する熱を逃がしたい
- 複数のダイを1つのパッケージに収めたい
現在では、パッケージは半導体チップの性能を外部へ引き出すための重要な設計要素になっています。
WLCSP・FOWLP・SiPとは
半導体パッケージを小型化したり、複数の機能をまとめたりするため、さまざまな技術が利用されています。
WLCSP
WLCSPは、ウエハーの状態で外部端子や保護層を形成し、その後にダイへ切り分ける技術です。
完成したパッケージの大きさをダイとほぼ同じにできるため、小型化や薄型化に向いています。
一方、端子をダイの範囲内に配置するため、ダイが小さい場合は配置できる端子数が限られます。
FOWLP
FOWLPの代表的な方式では、切り分けたダイを支持体上に並べ、樹脂で固めて再構成したウエハーを作ります。具体的な製造順序や構造は、方式によって異なります。
ダイの外側まで再配線層を広げられるため、ダイより広い範囲に外部端子を配置できます。
パッケージ基板を使わずに薄型化しやすい点も特徴です。
SiP
SiPは、機能の異なる複数のダイや部品を1つのパッケージ内にまとめる技術です。
例えば、演算用半導体、メモリ、通信回路、受動部品などを組み合わせて、パッケージ全体で1つのシステムを構成します。
WLCSPやFOWLPが主にパッケージの形成方法を表すのに対し、SiPは複数の機能を1つのパッケージにまとめる考え方を表しています。
2.5D・3Dパッケージとチップレット
高性能な半導体では、複数のダイを近い距離で接続する先端パッケージ技術が重要になっています。
2.5Dパッケージでは、複数のダイをインターポーザーなどの上に並べ、高密度な配線で接続します。
演算用のダイとHBMを近くに配置すれば、一般的なプリント基板を経由する場合よりも、多くのデータを短い距離でやり取りできます。
3Dパッケージでは、ダイを上下方向に積み重ねます。TSVやマイクロバンプ、ハイブリッド接合などを組み合わせて接続する方式があり、配線距離の短縮や実装面積の削減を図ります。ワイヤで接続する積層方式もあるため、すべての3DパッケージがTSVを使うわけではありません。
チップレットでは、1枚の大きなダイにまとめていた機能を、演算、I/O、キャッシュなどの小さなダイへ分割し、1つのパッケージ内で接続します。
ここでも、それぞれの言葉が表すものは異なります。
- 2.5D・3D:複数のダイをどのように配置・接続するか
- チップレット:機能を複数のダイへ分割する設計思想
- インターポーザー:複数のダイ間を細かな配線でつなぐ部材
- HBM:複数のDRAMダイを積層した広帯域メモリ
チップレットや2.5D・3D実装については、関連記事でさらに詳しく解説しています。
半導体パッケージング技術の課題
パッケージ技術が高度になるほど、設計や製造の難易度も上がります。
放熱が難しくなる
複数の高性能ダイを近くに配置すると、狭い範囲に熱が集中します。
特にダイを上下に積層する3D構造では、内部にあるダイの熱を外部へ逃がす経路が長くなります。
接続部分の信頼性が求められる
半導体チップとパッケージ基板では、使用される材料の熱膨張率が異なります。
温度の上昇と低下を繰り返すと、それぞれの材料が異なる割合で伸び縮みするため、バンプやはんだ接合部に応力が加わります。
その結果、接続部分に亀裂や剥離が発生する可能性があります。
パッケージの反りが発生する
ダイ、樹脂、パッケージ基板など、異なる材料を組み合わせると、製造工程や動作時の温度変化によってパッケージが反ることがあります。
反りが大きくなると、バンプやはんだボールが正常に接触せず、接続不良につながります。
設計と検査が複雑になる
複数のダイを1つのパッケージに搭載すると、個々のダイだけでなく、ダイ間の通信、電力供給、接続状態、温度なども確認しなければなりません。
不具合が発生した場合に、ダイ、接続部、パッケージ基板のどこに原因があるのかを特定することも難しくなります。
製造コストが高くなる
微細なバンプ、高密度なパッケージ基板、インターポーザー、高性能な放熱部品などを使うと、パッケージの製造コストが増加します。
高性能な構造を採用すればよいのではなく、製品に必要な性能とコストのバランスを考えることが大切です。
半導体パッケージについて間違えやすいポイント
半導体パッケージにはさまざまな名称があるため、異なる分類の用語が混ざりやすくなります。
例えば、BGAは外部端子の配置方法、フリップチップはダイの接続方法、2.5Dは複数ダイの配置・接続構造を表します。
また、チップレットはパッケージそのものの名前ではなく、半導体の機能を複数のダイへ分割する設計思想です。
さらに、パッケージを小さくすれば必ず高性能になるわけではありません。
小型化によって信号経路を短くできる一方、放熱や製造、接続信頼性が難しくなる場合もあります。
パッケージを理解するときは、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
- ダイとパッケージ内部をどうつなぐか
- パッケージとプリント基板をどうつなぐか
- 複数のダイをどのように配置するか
まとめ
半導体パッケージは、半導体チップを包むだけのケースではありません。
チップを外部環境から保護し、プリント基板と電気的に接続し、動作中に発生した熱を逃がす役割があります。
今回の重要なポイントをまとめます。
- 回路を形成したウエハーを個々に切り分けたものをダイと呼び、パッケージ化されていないダイをベアダイと呼ぶ
- パッケージはチップを保護し、電気・電源・熱の経路を作る
- ワイヤボンディングは金属線、フリップチップはバンプで接続する
- DIP・QFP・QFN・BGAは、主に外部端子の形や配置を表す
- BGAとフリップチップは同じ分類ではない
- WLCSPやFOWLPによってパッケージを小型・薄型化できる
- SiPでは複数のダイや部品を1つのパッケージにまとめる
- 2.5D・3D実装では複数のダイを短い配線で接続する
- チップレットは機能を複数のダイへ分割する設計思想
- 先端パッケージでは放熱、反り、接続信頼性、検査が課題になる
半導体の性能は、チップ内部のトランジスタだけで決まるものではありません。
どれだけ高性能なチップを作っても、外部からチップへ十分な電力を供給できなかったり、信号を高速に伝えられなかったり、熱を逃がせなかったりすれば、本来の性能を発揮できません。
複数のダイやHBMを組み合わせる半導体が増えるなかで、パッケージはチップを守るための入れ物から、半導体全体の性能を作る重要な技術へと進化しているのです。


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