ロジック半導体とは?CPU・GPUの違いや構造の進化を初心者向けにわかりやすく解説

基礎知識

スマートフォンがタップに反応する、ゲームのキャラクターが動く、家電が温度に応じて運転を変える。こうした動作の裏側では、入力された情報をもとに計算や判断を行う回路が働いています。

その役割を担うのが、ロジック半導体です。CPUやGPUだけでなく、機器を制御するマイコンや、用途に合わせて回路を構成するFPGAなども関わります。

この記事では、まず「0と1で判断する」とはどういうことかを身近な例から説明します。その後、CPU・MCU・SoC・FPGA・ASICという名前の見方と、回路を構成するトランジスタの仕組みを整理します。

1.ロジック半導体は、情報をもとに計算・判断・制御する

ロジック半導体は、デジタル情報を処理し、計算・判断・制御を行う半導体です。「Logic」は論理という意味で、条件に応じて結果を決める回路も含まれます。

例えば、温度を調べてファンの運転を決める、操作に応じて画面の表示を変える、入力された数値を計算する、といった仕事です。

主な仕事何をするか例
計算数値を足す、掛けるなど画像の明るさを計算する
判断条件を比較して結果を決める設定温度に達したかを調べる
制御判断結果に応じて動作を進める駆動回路へ運転の指令を出す

情報を記憶するメモリ半導体と組み合わせることで、データを使いながら処理を進められます。ロジック製品の内部にも、CPUのキャッシュなどの記憶回路が含まれるため、計算する回路と記憶する回路は、一つのチップ内で共存することもあります。(SRAMなど)

CPU・GPU・DRAM・NANDの基本的な役割は、半導体の種類と役割の解説で紹介しています。

ここでは、その先の「回路はどう判断するのか」を見ていきましょう。

2.「0」と「1」を組み合わせると、どう判断できる?

デジタル回路は、電圧などの信号状態を0と1として扱います。実際の電圧が0Vと1Vに決まっているわけではなく、回路ごとに決めた低い電圧の範囲・高い電圧の範囲などを、論理値へ対応させます。

二つの条件を満たすと動く、ANDの例

説明用のファン制御として、次の二つを考えます。

  • A:温度が設定値以上なら1、設定値未満なら0。
  • B:運転モードがONなら1、OFFなら0。

「温度が設定値以上」かつ「運転モードがON」のときだけ、運転指令Yを1にしたい場合、ANDという論理を使えます。ANDは、両方の入力が1のときだけ出力を1にする働きです。[1]

温度条件 A運転モード B運転指令 Y
000
010
100
111

この表のように、入力と結果の対応をまとめたものを真理値表と呼びます。ここでの0・1は、条件の不成立・成立を表す約束です。

実際にファンを回すには、ロジックの出力を受けて電力を制御する駆動回路も必要です。運転を判断する回路と、モーターへ電力を供給する回路には、それぞれ役割があります。

基本の論理を組み合わせて、複雑な処理を作る

代表的な論理には、AND、OR、NOTがあります。

論理入力と結果の関係
AND両方が1なら、出力が1
OR少なくとも一方が1なら、出力が1
NOT入力が0なら1、1なら0へ反転

こうした処理を行う基本回路を論理ゲートと呼びます。多数のゲートに、値を保持する回路や配線を組み合わせることで、数値の計算、比較、処理の順序管理などを実現します。

CPUでは、それらを組み合わせた回路がプログラムの命令を実行します。一つの条件判断から、大量のデータ処理まで、基本回路の組み合わせが働いているのです。

3.CPU・GPU・MCUは、どんな仕事を担当する?

ロジック半導体の名前を見るときは、まず担当する仕事を押さえると分かりやすくなります。

名前主な役割用途の例
CPU命令を実行し、幅広い計算・判断・制御を行うPCのアプリ、機器の処理管理
GPU多数のデータに対する並列計算を進めるゲームの描画、AIの計算
MCU〈マイコン〉CPUやメモリ、入出力などをまとめ、機器を制御する家電、車載機器、産業機器

CPUも複数のコアを使って並列処理できます。GPUとの違いは、どちらが並列処理できるかではなく、どのような処理に向いた設計かにあります。[2]

MCUは「Microcontroller Unit」の略です。CPU、メモリ、入出力回路などを一つのチップに集積し、センサ信号を読み、タイマーや通信機能を使って機器の動作を制御します。[3]

4.SoCは「機能をまとめる構成」

SoCは「System on a Chip」の略で、CPUやGPU、各種制御回路などを一つのチップへ集積した構成を表します。組み込まれる機能は製品によって異なります。[4]

例えばスマートフォン用のSoCでは、CPU、GPU、画像処理回路、AI処理回路、メモリ制御回路などを組み合わせます。CPUやGPUは、そのSoCの内部で働く機能として見ることができます。

ここで重要なのは、CPU・GPU・MCU・SoC・FPGA・ASICを、同じ基準の六つの種類として扱わないことです。

名前を見る視点主な用語確認すること
処理する機能CPU・GPUなどどんな計算や制御を担当するか
機器制御の製品・集積構成MCU・SoCどの機能を一つにまとめるか、何に使うか
回路を作る・構成する方法FPGA・ASIC製造後に論理構成を設定できるか、用途へ専用設計するか

MCUも、CPUやメモリ、周辺回路を集積しています。そのため、MCUとSoCは完全に独立した分類ではありません。一般には、機器制御用の製品をMCUと呼び、スマートフォンなどの多機能な構成をSoCと呼ぶ場面が多い、という使い方の違いもあります。

また、CPUと設定可能な論理回路を同じチップにまとめたFPGA系のSoCもあります。[5]

一つの製品に、複数の名前が当てはまることがあると考えると整理できます。

5.FPGAとASIC:ソフト変更と回路構成の変更を区別する

CPUは、プログラムを変えて処理を変える

CPUは、同じ基本回路を使ってさまざまなプログラムを実行します。ソフトウェアを更新すれば、計算の手順や条件判断を変えられます。

これは、製造済みチップのトランジスタや金属配線を作り直しているわけではありません。回路が実行する命令を変えることで、処理内容を変えています。

FPGAは、論理ブロックと接続の設定を変える

FPGAは「Field Programmable Gate Array」の略です。設定可能な論理ブロックや接続を使い、製造後にユーザーが必要な論理回路を構成できることが特徴です。試作に加え、通信や産業機器などの製品にも使われます。[5]

例えば、入力データを計算する回路を作った後に、別の処理へ対応するよう論理ブロックや接続の設定を変更できます。物理的な部品がチップ内を移動するのではなく、あらかじめ用意された回路の設定を変えます。

なお、FPGAにCPUを組み込んでソフトウェアを動かす構成もあります。ソフトによる処理と、設定した専用の論理回路による処理を、同じ製品で組み合わせることもできます。[5]

ASICは、用途に合わせて回路を専用設計する

ASICは「Application Specific Integrated Circuit」の略で、特定用途に合わせて設計した集積回路です。通信、画像処理、AIなど、必要な処理へ回路を最適化できます。[6]

一般的なASICは、製造した後に、FPGAのように回路全体の論理構成を設定し直すものではありません。一方、内部にCPUや設定用の回路を含めれば、ソフトウェアや設定値によって変えられる動作もあります。

比較する点FPGA一般的なASIC
回路の用意製造済みの論理ブロックなどを設定する用途に合わせて設計し、製造する
製造後の論理構成設定可能な範囲で変更できる基本となる回路構成は固定
特徴回路の更新や試作に対応しやすい必要な機能・性能・電力へ最適化しやすい
コストを見る視点デバイス費用、設計、必要な数量開発・製造準備の費用、数量当たりの費用

どちらが有利かは、要求する性能や消費電力、開発期間、生産数量、変更の必要性などによって変わります。「製造後に回路構成を変えること」と「ソフトや設定値で動作を変えること」を分けて考えましょう。

6.トランジスタは、どのように電流を制御する?

論理ゲートの基本となる部品の一つが、トランジスタです。ロジック回路では、MOSFETという種類のトランジスタを組み合わせる技術が広く使われています。

MOSFETを理解するには、次の三つの場所に注目します。

部分役割
ソース・ドレイン電流の通り道の両端になる
チャネルソースとドレインを結ぶ、制御対象の通り道
ゲート電圧によってチャネルの電流を制御する電極

ゲートとチャネルの間には、薄い絶縁膜があります。 ゲートの電圧が作る電界によって、チャネルの電流を制御します。ゲートの金属からチャネルへ、直接電流を流し込む仕組みではありません。[7]

トランジスタをスイッチとして使い、複数のスイッチを組み合わせることで論理回路を作ります。ただし、一個のトランジスタがONなら必ず論理値1になる、という一律の対応ではありません。回路全体のつながりで出力が決まります。

トランジスタの進化の歴史:平面から、立体的に囲む構造へ

ロジック半導体の性能向上を支えてきたのが、内部にある小さなスイッチ、トランジスタの改良です。先端のロジック半導体では、小さくして数を増やす工夫と、小さくなっても電流をしっかり制御する工夫を重ねてきました。

① 平面型:小さなスイッチを、より多く並べる

従来、広く使われてきたのが、Planar〈プレーナー・平面型〉です。シリコン基板の表面に電流の通り道を作り、ゲートが主に上側から電流を制御します。

トランジスタや配線を細かくする「微細化」を進めると、同じ広さのチップに、より多くの回路を組み込めます。これにより、複雑な計算や多くの機能を、一つのチップで扱えるようになってきました。

② 小さくすると、「OFFにしても流れる」が課題になった

ところが、通り道を短くしてソースとドレインが近づくと、ゲートだけでは電流を十分に制御しにくくなります。OFFにしたつもりでも流れる「漏れ電流」が増えやすくなり、余分な電力を使う原因になります。

そこで必要になったのが、小さなスイッチでも、流すときは流し、止めるときはしっかり抑えるための構造です。

③ 2010年代:FinFETで、上と両側から制御する

その解決策の一つが、FinFET〈フィンフェット〉です。「Fin」は魚のひれを意味し、シリコンを細いひれ状に立ち上げた形に特徴があります。

代表的な三面ゲート構造では、ゲートが通り道の上面と両側面を囲みます。上側だけから制御する平面型に比べ、電流を制御しやすくなり、漏れ電流の抑制や低い電圧での動作に役立ちます。Intelは2011年に、この構造を使った22nm世代の技術を発表しました。

④ 2020年代:GAAで、通り道の周囲を囲む

さらに細かな構造で制御力を高めるために登場したのが、GAA〈ジーエーエー〉です。「Gate-All-Around」の略で、ゲートが電流の通り道の周囲をぐるりと囲みます。

ナノシート型のGAAでは、薄い板状の通り道を上下に重ね、それぞれをゲートで囲みます。FinFETよりも周囲から電流を制御しやすくし、性能と省電力の両立を目指す構造です。Samsungは2022年に、GAAを採用した3nmプロセスの初期生産を開始したと発表しました。

ここまでの構造の違いを、表で整理します。

構造チャネルとゲートの位置関係注目する点
Planar〈平面型〉基板表面のチャネルを、主に上側から制御する平面上の通り道とゲート
FinFET〈代表的な三面ゲート〉ひれ状のチャネルを、上面と両側面から制御する複数の面からの制御
GAA〈ナノシートの例〉シート状のチャネルを、周囲から囲んで制御する各シートの周囲を囲むゲート

どの構造にも、ゲートとチャネルの間に絶縁膜があります。ゲートが通り道を「囲む」とは、直接触れることではなく、絶縁膜をはさんで電界による制御を行うことです。

進化の流れは、「小さくするほど制御が難しくなるため、上側から、三面から、周囲全体からと、ゲートの囲み方を工夫してきた」と考えると分かりやすくなります。

ただし、すべての製品が一斉にGAAへ置き換わるわけではありません。必要な性能や電圧、コストなどによって適した技術は異なり、平面型やFinFETも用途に応じて使われます。

7.性能は、微細化・回路設計・データ供給を合わせて考える

微細化には、限られた面積へ多くの回路を集積する狙いがあります。ただし、トランジスタ数やプロセス世代の数字だけで、製品の性能が決まるわけではありません。

「3nm」「2nm」などは、現在では製造プロセスの世代を表す名称として使われます。チップ内のすべての寸法がその数値になるわけではありません。IBMも、2nm世代の試作技術について、世代名と実際の構造寸法を区別して説明しています。[9]

実際の性能を見るときには、次の組み合わせが重要です。

確認するもの性能との関係
回路設計・ソフトウェア必要な処理を効率よく実行できるか
トランジスタ・配線電流の制御、信号の伝わり方、回路の集積
メモリ・チップ間接続計算に必要なデータを十分に供給できるか
電源・放熱必要な電力を供給し、動作を継続できるか

例えば、計算回路が高速でも、データを受け取るまでの待ち時間が長ければ、その能力を十分に使えません。AI向けのシステムでHBMやチップ間接続が重要になるのも、この役割分担があるためです。

設計した回路を、製造工程で実際の形にする

回路の設計情報は、ウェーハ上の材料や構造として作り込まれます。薄膜を形成し、レジストの塗布・露光・現像でパターンを作り、必要な部分を加工する工程などを繰り返します。塗布・現像と露光は、それぞれの装置が担当する異なる仕事です。

トランジスタや配線を狙った寸法・位置・形状にするには、材料、加工条件、計測結果を合わせて管理する必要があります。ロジック半導体は、回路設計と製造技術の両方で実現する製品です。

製品を設計する企業と製造する企業の分担は、半導体業界マップで説明しています。

8.AI時代のプロセッサ用語:NPU・TPU・DPU・XPU

AIの普及やデータ処理量の増加に伴い、特定の仕事を効率よく行う専用プロセッサも注目されています。ここでは、技術ニュースで見かける名前を簡単に整理します。

名前主な役割と使われ方
NPU〈Neural Processing Unit〉ニューラルネットワークの計算を効率よく行う。端末上での画像・音声認識など、推論〈学習済みAIを使って結果を出す処理〉を省電力で実行する用途に使われる。[10]
TPU〈Tensor Processing Unit〉Googleが開発するAI向けの専用プロセッサ。行列演算などを高速に処理し、AIの学習や推論に使われる。[11][12]
DPU〈Data Processing Unit〉データセンターの通信、ストレージ、セキュリティなどの処理を引き受け、CPUの負担を減らす。NVIDIAのBlueFieldなどが代表例。[13]

これらの名前も、前半で説明したASICやSoCとは見方が異なります。例えば、TPUはAIの計算に特化したプロセッサであり、用途に合わせて専用設計されたASICでもあります。[11]

XPUは、文脈によって意味が変わる呼び方

XPUは、Intelの用法ではCPU・GPU・FPGA・その他のアクセラレータをまとめて扱う呼び方です。一つの決まった種類のチップを指す言葉ではありません。[14] 一方、AI開発で使われるPyTorchでは、XPUはIntel GPUを扱う名称として使われます。XPUを見かけたら、どの企業・資料で何を指しているかを確認しましょう。[15]

9.まとめ:役割・構成・作り方を分けると整理できる

ロジック半導体は、情報をもとに計算・判断・制御を行います。基本の論理や記憶回路を組み合わせ、プログラムの実行から機器の制御まで、さまざまな処理を実現します。

名前を読むときは、次の三つを分けて考えましょう。

  • 役割:CPUやGPUなどが、どんな処理を担当するか。
  • 構成:SoCやMCUが、どの機能をまとめているか。
  • 作り方・設定方法:FPGAの設定可能な論理や、ASICの専用設計をどう使うか。

さらに内部の構造では、トランジスタ、ゲート絶縁膜、配線などが、その処理を支えています。用語を一列に暗記するより、何を表す名前かを確認すると、製品の説明や技術ニュースを読み取りやすくなります。

次に読む記事:

参考資料

  1. Texas Instruments:SN74HC08・2入力ANDゲートのデータシート
  2. Intel:CPUとGPUの比較
  3. STMicroelectronics:Microcontrollers and Microprocessors・FAQ
  4. Arm:SoC Development
  5. Arm:FPGA
  6. Arm:ASIC
  7. 東芝デバイス&ストレージ:MOSFETの構造と動作
  8. Intel:RibbonFET〈GAAの構造説明〉
  9. IBM Research:Introducing the world’s first 2 nm node chip〈2021年の技術解説〉
  10. Arm:Explore Edge AI on Arm〈NPUの役割と省電力な推論〉
  11. Google Cloud:TPUのアーキテクチャ〈Googleが設計するAI向けASIC〉
  12. Google Cloud:Tensor Processing Units〈AIの学習・推論への利用〉
  13. NVIDIA:BlueField-3 Networking Platform User Guide・Introduction〈DPUの役割〉
  14. Intel:The Evolution of XPU and the Critical Role of Software〈IntelによるXPUの用法〉
  15. PyTorch:XPU Support〈Intel GPUを扱うXPU API〉

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