スマートフォンの仕様にある「メモリ8GB・ストレージ256GB」。どちらもデータを入れる場所なのに、なぜ別々の容量が書かれているのでしょうか。
ゲームやAIの話題では、CPUとGPUという名前も登場します。これらも同じ半導体ですが、担当する仕事は異なります。
機器の仕組みを理解するには、まず「計算する部品」と「データを置く部品」を分けて考えると整理できます。この記事では、代表的なCPU・GPU・DRAM・NANDを、比較表とゲームの動作例から説明します。
1.CPU・GPU・DRAM・NANDの違いを一目で理解
四つの役割は、次のように整理できます。
| 名前 | 主な仕事 | 身近な使われ方 | たとえるなら |
|---|---|---|---|
| CPU | プログラムの命令を実行し、計算・判断・制御を行う | アプリの実行、ゲームの進行、機器の制御 | 幅広い仕事をこなす担当者 |
| GPU | 多数のデータに対する計算を並列に進める | ゲームの描画、AIの計算 | 多くの作業を分担するチーム |
| DRAM | 処理中に使うデータを素早く読み書きする | PCやスマホのメインメモリ | 作業机 |
| NAND | 電源を切ってもデータを保持する | SSD、スマホのストレージ、SDカード | 収納・本棚 |

CPUとGPUは、計算・判断・制御を担うロジック半導体の代表例です。DRAMとNANDは、情報を記憶するメモリ半導体に含まれます。
作業する人だけがいても、資料を置く場所や保管場所がなければ仕事は進みません。コンピューターでも、計算と記憶を組み合わせることで、アプリを動かしたりデータを保存したりできます。
なお、半導体には電力を制御するものや光を検出するものもあります。ほかの役割は、後半の「ほかの半導体は何をする?」で紹介します。
2.CPUとGPU:計算を担当する半導体
CPU 命令を実行して幅広い処理を進める
CPUは「Central Processing Unit」の略で、日本語では中央処理装置と呼ばれます。プログラムの命令を読み取り、計算や条件判断、ほかの回路への処理の依頼などを行います。[1]
例えばゲームでは、プレイヤーの操作を受け取り、キャラクターの状態を更新し、敵の行動などを処理します。「体力がゼロになったらゲームオーバーにする」といった、条件によって動作が変わる仕事も担当します。
CPUは、OSやアプリなどの幅広い処理を柔軟に実行できることが特徴です。OSとは、アプリの実行や機器の利用を管理する基本ソフトウェアです。
GPU 多数の計算をまとめて進める
GPUは「Graphics Processing Unit」の略です。画像を描く処理で発展し、多数のデータに対する似た計算を、並列に進める設計を得意とします。並列処理とは、複数の処理を同時に進めることです。[1][2]
ゲームの画面を作るには、物体の位置や形、色、光の当たり方などについて、多くの計算が必要です。GPUはこうした処理を分担して進めます。
AIでも、大量の数値を掛け合わせたり足し合わせたりする処理が登場します。そのため、GPUは画像の描画に加え、AIや科学技術計算でも利用されています。
| 比較する点 | CPU | GPU |
|---|---|---|
| 得意な仕事 | 幅広い命令の実行、条件判断、制御 | 多数のデータに対する並列計算 |
| ゲームでの例 | 入力の処理、ゲームの進行 | 画面を描くための計算 |
| 性能を活かす条件 | 処理内容や各コアの能力などが合うこと | 多くの計算を分担できること |
CPUも並列処理できます。 CPUの「コア」は、命令を実行する処理単位です。複数のコアがあれば、処理を分担して進められます。ただし、コア数が2倍でも、分担できない処理やデータ待ちがあれば、処理速度が2倍になるとは限りません。
CPUとGPUの違いは、並列処理ができるかどうかではなく、どのような処理に向いた設計かにあります。また、CPUのコア数とGPUの演算器の数は、同じ意味の数字として直接比較できません。
3.DRAMとNAND:記憶を担当する半導体
DRAM 今使うデータを置く作業机
DRAMは「Dynamic Random Access Memory」の略です。実行中のプログラムや作業中のデータを置き、必要なときに素早く読み書きする用途で使われます。PCやスマートフォンのメインメモリには、一般にDRAMが使われています。[3]
勉強するとき、本棚の教科書やノートを机に出して使うように、コンピューターも必要なデータを作業用のメモリに置きます。
一般的なDRAMは、小さなキャパシタに蓄えた電荷で情報を表します。キャパシタは、電荷を蓄える部品です。電荷は少しずつ失われるため、定期的に情報を読み出して書き直す「リフレッシュ」が必要です。[3]
電源を切ると情報を保持できなくなる性質を、揮発性と呼びます。DRAMは揮発性メモリなので、写真や文書を電源OFF後も残す保存先には向きません。
NAND 電源を切っても残る保存場所
NANDフラッシュメモリは、電源を切っても情報を保持できる不揮発性メモリです。SSD、USBメモリ、SDカード、スマートフォンのストレージなどで利用されます。[4]
本棚が本を保管する場所であるように、NANDは写真、動画、アプリ、文書などを保存する場所を担います。作業用のDRAMと組み合わせることで、必要なデータを使いながら、電源OFF後も保存できます。
| 比較する点 | DRAM | NANDフラッシュメモリ |
|---|---|---|
| 主な用途 | 作業中のデータの読み書き | データの保存 |
| 電源を切った後 | 情報を保持できない | 情報を保持できる |
| 読み書きの特徴 | 頻繁なアクセスに向く | 一般にDRAMよりアクセスが遅い |
| 容量当たりのコスト | NANDより高い傾向 | 大容量を低コストで実現しやすい |
| 身近な例 | メインメモリ | SSD、スマホストレージ |
ここで、NANDとSSDは同じものではありません。 NANDは記憶を担う半導体で、SSDはNANDや、その読み書きを管理するコントローラなどを組み合わせたストレージ製品です。[4]
DRAMとNANDは、速度や保存の性質が異なるため、使う目的に合わせて役割分担しています。
4.ゲームを起動すると、四つはどう動く?
専用GPUとSSDを搭載したPCでゲームをする場面を考えてみましょう。以下は、部品の役割を理解するための代表例です。実際には複数の処理が重なって進みます。

① CPUが、起動に必要な処理を進める
ゲームを起動すると、CPUがOSなどのプログラムを実行し、必要なデータを読み込む処理を進めます。ゲームのプログラムや画像データは、起動前からSSDのNANDに保存されています。
② 必要なデータをDRAMへ読み込む
SSDから読み出したプログラムやデータのうち、処理に必要なものをDRAMへ置きます。大きなゲームの全データを、必ず一度に読み込むわけではありません。
③ CPUが、ゲームの状態を更新する
CPUは操作入力に応じてキャラクターを動かし、ゲームの進行に必要な計算を行います。処理中のデータはメモリで読み書きされ、状態の変化に合わせて更新されます。
④ GPUが、描画に必要な計算を行う
CPU側のプログラムがGPUへ描画処理を依頼し、GPUが画像を作るための計算を進めます。専用GPUでは、画像や計算用のデータを置く専用メモリも使われます。
このようなGPU用のメモリは、一般に「VRAM」と呼ばれます。CPUのメインメモリとGPUの専用メモリを分ける構成のほか、内蔵GPUがCPUとシステムメモリを共有する構成もあります。[5]
⑤ セーブデータをSSDへ書き込む
ゲームを保存すると、進行状況など、次回も残しておきたい情報がSSDへ書き込まれます。保存が完了したデータは、PCの電源を切った後もNANDに残ります。
この例のポイントは、データを保存する仕事、作業中に読み書きする仕事、計算する仕事が分かれていることです。CPUは読み込み時から動いており、データが常に「NAND→DRAM→CPU→GPU」という一本の経路だけを通るわけではありません。
なお、実際の機器にはCPU内のキャッシュメモリや各種コントローラもあります。ここでは、四つの役割をつかむために、細かな構成を省略しています。
5.メモリ8GB・ストレージ256GBは何が違う?
スマートフォンの仕様に「メモリ8GB・ストレージ256GB」と書かれている場合、通常は次の二つの容量を示しています。
| 仕様の表示例 | 主に示すもの | 容量の意味 |
|---|---|---|
| メモリ8GB | DRAMを使う作業用メモリ | 実行中の処理に使えるデータの置き場所 |
| ストレージ256GB | NANDを使う保存用ストレージ | アプリ、写真、動画などの保存場所 |

GBはデータ量の単位です。同じ単位でも、表している場所と役割が違うため、8GBと256GBを足して「264GBの作業用メモリ」とは考えません。
机の広さと収納の大きさを別々に考えるのと同じです。収納が大きくても机に多くの資料を広げられるとは限らず、机が広くても収納に入る本の数は増えません。
では、容量が不足すると何が起こるのでしょうか。
| 不足するもの | 起こり得ること |
|---|---|
| 作業用メモリ | アプリの切り替え時に再読み込みが増える、処理が重くなる |
| ストレージの空き容量 | 写真や動画を保存できない、アプリの更新ができない |
具体的な動作はOSやアプリによって異なります。また、容量が十分な機器でメモリを増やしても、必ず処理が速くなるとは限りません。容量は「置ける量」であり、読み書きの速さとは別の性能です。
6.SoC・HBMは、CPU・GPU・DRAMとどう関係する?
SoCは、複数の機能をまとめたチップ
SoCは「System on a Chip」の略です。CPU、GPU、メモリとの通信を管理する回路など、複数の機能を一つのチップへ集積します。組み込まれる機能は製品によって異なります。[6]
CPUとGPUが「何を処理する機能か」を表すのに対し、SoCは「複数の機能をどうまとめるか」を表す名前です。例えばスマートフォンでは、CPUとGPUが一つのSoCに含まれる構成が一般的です。
そのため、四つの役割が分かれているからといって、機器の中に必ず四つの独立したチップが並んでいるわけではありません。機能の違いと、物理的なチップの分け方は区別して考えます。
HBMは、高いデータ転送能力を持つDRAM
HBMは「High Bandwidth Memory」の略です。DRAMのチップを積層し、幅広い接続などによって、多くのデータを転送できる構造を持つメモリです。AI向けのGPUなどで利用されます。[7]
ここでいう「帯域」は、単位時間に転送できるデータ量のことです。GBが保存できる量を表すのに対し、GB/sなどは1秒間に転送できる量を表します。
GPUが高速に計算できても、必要なデータが届くまで待つ時間が長ければ、その能力を十分に使えません。そこで、メモリから大量のデータを供給する能力が重要になります。
HBMはDRAMを使う技術なので、NANDのような電源OFF後の保存場所ではありません。「AI向けメモリ」という名前だけでなく、作業用のデータを供給する役割に注目すると理解できます。

7.ほかの半導体は何をする?
PCやスマートフォンの中心部分を学ぶには、計算と記憶の関係が役立ちます。一方、半導体は電源、カメラ、通信、家電、自動車などでも使われています。
| 分野 | 主な役割 | 身近な例 |
|---|---|---|
| パワー半導体 | 電力を変換・制御する | エアコンのモーター駆動、電源装置 |
| アナログ半導体 | 電圧などの連続的な信号を処理する | 音声の増幅、電源管理、信号の変換 |
| センサ半導体 | 光や温度などを検出する | スマートフォンのカメラ、温度検出 |
| 光半導体 | 光を出したり受けたりする | LED、レーザーダイオード、受光素子 |
この表は、役割をつかむための整理です。分野は完全に独立しているわけではなく、光を検出する素子のように、複数の分野に関係するものもあります。
スマートフォンで写真を撮る場面なら、イメージセンサが光を電気信号へ変え、処理回路が画像を整え、ストレージが保存します。CPU・GPU・メモリに加えて、別の役割の半導体も協力して機器を動かしています。
8.まとめ:半導体は役割分担で理解する
CPU・GPU・DRAM・NANDを理解するときは、まず担当する仕事を押さえましょう。
- CPU:プログラムの命令を実行し、幅広い計算・判断・制御を行う。
- GPU:多数のデータに対する計算を並列に進める。
- DRAM:処理中のデータを素早く読み書きする。
- NAND:電源を切った後もデータを保持する。
この役割分担が分かると、スマートフォンのメモリとストレージ、ゲーム用GPU、AI向けHBMなどを、何のために使う部品なのかという視点で読めるようになります。
さらに詳しく学びたい方は、次の記事へ進んでください。
- ロジック半導体とは?CPU・GPU・SoCとの違いや構造の進化
- メモリ半導体とは?DRAM・SRAM・NAND・HBMの違い
- パワー半導体とは?仕組みや種類、SiC・GaNとの違い
- センサ半導体とは?種類や仕組み、用途


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