センサ半導体の種類を比較|光・動き・温度を検出する仕組み

基礎知識

スマートフォンは、どうやって周囲の明るさや本体の傾きを知るのでしょうか。

カメラで光を受け取る、画面の向きを判断する、機器内部の温度を監視する。こうした機能を支えているのが、センサ半導体です。

ただし、光を検出するセンサと、動きや温度を検出するセンサでは、内部の仕組みが異なります。何を測り、どのような電気信号に変えるのかを比べると、それぞれの役割が分かりやすくなります。

この記事では、主なセンサ半導体を比較したうえで、光・動き・温度に加え、距離・圧力・磁気の検出方法を解説します。現実世界の情報を使ってロボットなどが行動する「フィジカルAI」との関係や、ソニーのイメージセンサ技術の強みも見ていきましょう。

センサ半導体とは

センサ半導体〈センサー半導体〉は、光・温度・圧力などの状態や変化を検出し、電子回路で利用できる電気信号へ変える半導体デバイスです。

例えば、光を受けると電流が変わる受光素子や、加速度によって内部の微小構造が動くセンサがあります。検出する対象に合わせ、半導体の性質や微細加工技術が使われています。[1][12]

電子機器では、センサが情報を取得し、CPUなどのロジック半導体が計算・制御を行い、メモリがデータを保持します。これは機能による役割分担であり、一つの製品の中に複数の機能を組み込む場合もあります。

信号をデータにする

検出した小さな信号は、必要に応じて増幅したり、A/D変換で数値化したりして利用します。A/D変換は、連続的に変わる電圧などを、デジタルの数値へ変える処理です。

こうした処理をセンサICの内部で行い、データとして出力する製品もあります。センサを理解するときは、検出する素子と、その信号を使いやすくする回路の両方を見ることが大切です。[3][6]

種類と役割を比較

主なセンサを、検出するもの・信号に変える方法・用途で比較してみましょう。

検出するもの主なセンサ信号に変える方法の例主な用途
光の分布CMOSイメージセンサ画素で受けた光を電荷や電気信号へ変えるスマホのカメラ、機器の周囲認識
周囲の明るさ照度センサ受けた光に応じて変わる電流などを読む画面の明るさの自動調整
加速度加速度センサおもりの変位による静電容量の変化などを読む傾きの推定、振動・衝撃の検出
回転の速さジャイロセンサ振動する構造に回転に応じて働く力などを利用する手ぶれ補正、姿勢の推定
温度半導体温度センサICダイオードやトランジスタの温度特性を利用する電子機器の温度監視
対象物までの距離光学式ToFセンサ対象物で反射した光の時間差や位相差を読むロボットの周囲認識、物の位置・形状の計測
圧力圧力・気圧センサ膜の変形に伴う抵抗の変化などを読む気圧計測、圧力の監視
磁界磁気センサホール効果による電圧などを利用するモータの位置・回転検出

表の方式は代表例です。同じ種類のセンサでも、検出方法や出力形式には複数の選択肢があります。[2][3][4][5][6][8][9][12][13]

ここで押さえたいのは、「光を見る」「動きを捉える」「温度を測る」では、利用する現象が違うことです。

また、イメージセンサも照度センサも光を利用しますが、前者は画像を得るため、後者は主に明るさを測るために使います。用途に応じて、必要な情報の取り出し方が変わります。

光を検出する

光を検出する基本的な素子の一つが、フォトダイオードです。光を受けると電荷が生じ、それを電流などの電気信号として取り出せます。

入ってきた光の情報を電気信号へ変えることで、電子回路が明るさや画像を扱えるようになります。[1]

画素で光を受ける

スマートフォンのカメラなどに使われるCMOSイメージセンサには、多数の「画素」が並んでいます。画素は、画像を構成する小さな検出単位です。

それぞれの画素で受けた光の情報を読み出し、画像処理を経て写真や映像として利用します。レンズが光を集め、イメージセンサが電気信号へ変え、画像処理回路が情報を整えるという役割分担です。[2]

明るさを測る

照度センサは、周囲の明るさを検出します。受光素子で生じた電流などを利用し、明るさに対応する信号やデータを出力します。

スマートフォンの画面輝度を自動で調整する機能は、その利用例です。明るさの情報を受け取った制御回路やソフトウェアが、画面の表示を調整します。[3]

同じ光を検出するセンサでも、画像を得るのか、明るさを測るのかで役割が分かれます。

動きを検出する

動きを検出する代表例には、加速度センサとジャイロセンサがあります。

これらを小さく作るために使われる技術の一つが、MEMS〈Micro Electro Mechanical Systems〉です。半導体製造技術などを利用し、微小な機械構造や電気回路を作ります。

MEMSは技術・構造に関する呼び方です。加速度や圧力など、何を検出するかによる分類とは別の見方になります。[4][8][12]

加速度を検出する

加速度は、速度が変わる度合いです。MEMS加速度センサの代表的な方式では、ばねで支えられた小さなおもりと、固定された電極を使います。

センサ本体に加速度が加わると、おもりが本体に対してわずかにずれます。そのずれで電極同士の位置関係が変わり、静電容量が変化します。

静電容量は、電荷を蓄える能力を表す値です。その変化を読み取ることで、加速度を検出できます。[12]

静止している端末では、各方向に現れる重力による加速度の成分を手掛かりに、傾きを推定できます。スマホの画面回転などに使われる考え方です。[5][12]

回転を検出する

ジャイロセンサは、回転する速さである「角速度」を検出します。

MEMSジャイロの代表的な方式では、微小な構造を振動させておき、センサ本体が回転したときに生じる力を利用します。その力による構造の変化を電気的に読み出し、角速度を求めます。[4]

加速度センサで得た情報と、ジャイロセンサで得た回転の情報などを組み合わせると、機器の動きや姿勢を推定しやすくなります。

温度を検出する

温度センサには多くの方式があります。ここでは、ダイオードやトランジスタを利用する、半導体温度センサICを例に説明します。

温度を測る方法には、金属を使う熱電対や測温抵抗体などもあり、対象の温度や用途に応じて使い分けられます。[6]

電圧の変化を読む

半導体の接合部では、電圧と電流の関係が温度によって変わります。

例えば、ダイオードに一定の電流を流す条件では、接合部の電圧が温度に応じて変化します。その関係を利用すると、測定した電圧から温度を求められます。[7]

半導体温度センサICは、こうした検出部分と、信号を調整する回路などを組み合わせています。温度による小さな電気的変化を、機器で使える情報に整える仕組みです。[6]

出力と測定場所

温度センサICには、温度に対応する電圧を出すアナログ出力型と、数値化した温度データを出すデジタル出力型があります。[6]

温度を扱うときは、測定場所も大切です。基板上のセンサが捉える温度と、離れた場所にある部品の温度は、熱の伝わり方によって差が生じます。

検出素子の温度を電気的に測る方法と、周囲温度や部品温度を見積もることの関係を理解しておくと、「どこの温度を測っているのか」を整理できます。[6][7]

ほかのセンサ

センサ半導体には、距離・圧力・磁気を検出するものもあります。光・動き・温度と合わせて見ると、機器がどのように周囲や内部の状態を把握するのかが分かります。

距離を測る

対象物までの距離を測る方法の一つが、ToF〈Time of Flight〉です。ここでは、レーザーやLEDの光を使う光学式を取り上げます。

光を対象物に当て、反射して戻ってくるまでの時間から距離を求めるのが、dToFという方式です。同じ距離を光が往復するため、往復にかかった時間と光の速さから片道分の距離を計算します。

一方、光の明るさを周期的に変化させ、送った光と反射光の変化のずれを調べるiToFという方式もあります。このずれを「位相差」と呼び、距離の計算に利用します。[13]

距離画像センサでは、画面内の位置ごとに奥行きの情報を得られます。物の形や位置の計測、移動ロボットの周囲認識などに使われます。通常の画像に距離情報を加えることで、「何が見えるか」と「どれほど離れているか」を分けて捉えられます。[13]

圧力を測る

圧力センサの代表例では、シリコンで作った薄い膜を利用します。この膜を、ダイヤフラムと呼びます。

膜の両側に圧力差が生じると膜がたわみ、膜に設けた抵抗の値が変化します。この変化を電気信号として読み出し、圧力を求めます。力によって半導体の抵抗率が変わる「ピエゾ抵抗効果」を利用した方式です。[8]

大気の圧力を測るものは気圧センサと呼ばれます。気圧の変化から高度を推定する用途などがあります。圧力センサにも複数の方式があり、測定対象に合わせて使い分けます。[8]

磁気を検出する

磁気センサは、磁石や電流が作る磁界などを検出します。磁界は、磁石の力が働く空間の状態を表します。

半導体を使う代表例がホール素子です。電流を流した半導体に磁界が加わると、電流と磁界の両方に直交する方向に電圧が生じます。この「ホール効果」を利用し、磁界の強さや向きに応じた信号を取り出します。[14]

磁石と組み合わせれば、接触せずに部品の位置や回転を検出できます。ホール素子に信号処理回路を組み合わせたホールICは、モータの回転検出や開閉スイッチなどに使われます。[15]

フィジカルAI

フィジカルAIは、現実世界の状態を認識・理解し、ロボットなどの機器の行動につなげるAIです。画像や実世界のセンサデータなどを、判断や動作のための情報として利用します。[10]

そこでセンサは、周囲の環境や機器自身の状態を伝える役割を担います。

検出・判断・動作

例えば、荷物を運ぶロボットを考えてみましょう。

カメラは周囲の画像を取得します。距離センサは対象物までの隔たりを測り、加速度センサやジャイロセンサは、機体の動きや姿勢を推定するための情報を捉えます。

それらの情報をAIや制御回路が利用し、進む方向や動き方を決め、モータなどを動かします。動いた結果を再びセンサで確かめることで、周囲や機体の状態に応じた調整につなげます。

この例では、センサによる検出、AIなどによる認識・判断、制御回路やモータによる動作が連携しています。各処理の分担や使うセンサは、システムによって異なります。[4][10][13]

情報を組み合わせる

ロボットが周囲の状態を捉えるには、一つのセンサで得られる情報だけでは足りない場合があります。検出する対象が違えば、分かることも違うためです。

利用する情報分かることの例判断へのつながり
カメラの画像物体の外観や、画像内での位置AIなどが人や荷物を識別する手掛かり
距離センサのデータ対象物までの距離や、周囲の立体形状障害物との間隔や通れる空間を把握する手掛かり
加速度・角速度のデータ機体の加速や回転自分の動きや姿勢を推定する手掛かり

例えば、前方に箱があると認識できても、それだけでは箱までの距離や、自分がどの向きに動いているかを十分に把握できない場合があります。画像・距離・動きの情報を組み合わせれば、箱との位置関係や機体の状態を捉え、進路を調整するための情報を増やせます。

この例は、各センサの役割を説明するための構成例です。カメラの画像から距離や動きを推定する方法もあり、必ず別々のセンサが必要という意味ではありません。[4][10][13]

複数のセンサの情報を組み合わせ、状態を推定する考え方を「センサフュージョン」と呼びます。これはAIを使わない計算でも行われます。フィジカルAIでは、こうして得た状態の情報を、AIによる認識や行動の判断と連携させる構成が考えられます。[4][10]

機器内部も監視

ロボットなどの機器では、内部の温度を把握することも必要です。温度センサの情報は、発熱の監視や保護・制御にも利用できます。[6]

例えば、温度が設定した条件に達したことを検出し、制御回路側で処理負荷や動作を調整する構成が考えられます。

周囲を認識する情報と、機器を適切に動かし続けるための情報。その両方を捉えることが、システム全体を理解する手掛かりになります。

ソニーの強み

センサ半導体の分野で知られる日本企業の一つが、ソニーです。ソニーセミコンダクタソリューションズは、イメージセンサの受光構造や回路、チップを重ねる技術を発展させてきました。[2]

ソニーの技術を見るときは、光を捉える力、限られた面積に回路を組み込む工夫、検出した情報を処理する機能に注目すると、何がすごいのかを理解しやすくなります。

光を効率よく受ける

イメージセンサは、画素に届いた光を電気信号へ変えます。そのため、小さな画素に光を効率よく届けることが重要です。

ソニーが商品化してきた技術の一つに、「裏面照射構造」があります。従来の表面照射構造では、光が受光部に届くまでに配線などの影響を受けます。裏面照射構造では、配線がある側とは反対側から光を入れ、受光部に光を届きやすくします。

ソニーは、この構造に合わせたフォトダイオードの設計なども工夫し、感度の改善とノイズの低減を図ってきました。暗い場所での撮影などを支える技術です。[16]

画素と回路を重ねる

もう一つが、光を受ける画素部分と、信号を処理する回路部分を別々のチップとして作り、上下に重ねる「積層構造」です。

画素と回路を同じ平面内に並べる構成に比べ、小さなチップサイズに大きな処理回路を組み込みやすくなります。さらに、画素側には高画質化に適した製造方法、回路側には高機能化に適した製造方法を、それぞれ選べます。

小型化しながら、光を捉える性能と処理機能の両方を伸ばせることが、積層構造の利点です。[17]

センサ内でAI処理

ソニーのインテリジェントビジョンセンサでは、画素チップと、AI処理機能を持つロジックチップを重ねています。

撮影した画像を外部へ送るだけでなく、センサ内でAI処理を行い、その結果をメタデータとして出力できます。メタデータは、画像から認識した対象物などに関する情報です。必要な処理結果を出す構成では、画像全体を外部に送って処理する場合より、転送するデータ量を減らせます。[11]

センサの近くで処理する「エッジAI」の例であり、現実世界の情報を機器の判断へつなげる技術として捉えられます。実行できる処理は、搭載するAIモデルやシステム構成によって変わります。

これらの技術からは、受光部の構造と、信号処理回路、積層技術を組み合わせて機能を高めるという、ソニーの開発の特徴が分かります。各技術は製品ごとに採用が異なり、すべてのイメージセンサがAI処理を備えているわけではありません。

センサのまとめ

センサ半導体は、外部の状態や変化を、電子回路が利用できる電気信号へ変える役割を担います。

  • 光のセンサは、入ってきた光を電荷や電気信号へ変えます。
  • 動きのセンサは、微小構造の変位や振動に関わる現象などを利用します。
  • 半導体温度センサICは、接合部の電気的な特性が温度で変わることを利用します。
  • 距離・圧力・磁気のセンサも、それぞれ異なる現象を利用して状態を捉えます。

センサを比べるときは、名前に加えて、何を検出し、どの現象を利用し、どの用途で使うのかを確認してみましょう。

フィジカルAIでも、センサで現実世界の情報を得ることが、機器の認識・判断・動作を支える土台になります。ソニーの例に見られる受光構造や積層、センサ内での処理にも注目すると、センサ半導体の進化を具体的に理解できます。

参考資料

企業の公式技術解説・製品情報を参照しています。確認日:2026年10月24日。

  1. ローム:光センサ―フォトダイオードとフォトトランジスタ
  2. ソニーセミコンダクタソリューションズ:イメージセンサー共通
  3. ローム:照度・近接センサ
  4. TDK:MEMSモーションセンサとパッケージング技術
  5. エプソン:加速度センサーの仕組みとジャイロセンサーとの違い
  6. ローム:温度センサ
  7. アナログ・デバイセズ:ダイオードを利用した温度測定の原理
  8. ローム:気圧センサ
  9. 旭化成エレクトロニクス:ホール素子
  10. NVIDIA:フィジカルAIとは?
  11. ソニーセミコンダクタソリューションズ:インテリジェントビジョンセンサー
  12. ローム:加速度センサの分類とMEMS静電容量方式加速度センサ
  13. ソニーセミコンダクタソリューションズ:ToF技術〈産業用〉
  14. 旭化成エレクトロニクス:磁気センサーとは
  15. 旭化成エレクトロニクス:ホールIC
  16. ソニーセミコンダクタソリューションズ:裏面照射構造
  17. ソニーセミコンダクタソリューションズ:積層構造

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