文系でもわかる半導体の役割

基礎知識

スマホで写真を撮る、エアコンが室温に合わせて動く、充電器でバッテリーを充電する。こうした身近な機能を、機器の内部で支えているのが半導体です。

ニュースではよく見かけるものの、「何をしている部品なのか」「なぜAIにも必要なのか」と聞かれると、説明しにくいかもしれません。

この記事では、半導体という言葉の意味から、暮らしの中での役割、AIとの関係、不足が起こる理由までを紹介します。化学式や物理の数式を知らなくても、身近な機器の働きから理解できるように見ていきましょう。

半導体って何?

半導体は、もともとは材料の性質を表す言葉です。

電気の通しやすさに注目すると、材料は大きく「導体」「半導体」「絶縁体」に分けて説明できます。

呼び方電気の通しやすさ身近な例・代表例
導体電気を通しやすい銅やアルミニウムなどの金属
半導体導体と絶縁体の中間的な性質を持つシリコンなど
絶縁体電気を通しにくいゴムやガラスなど

ただし、「中間」とは、電気を半分だけ通すという意味ではありません。半導体では、材料への加工や光、温度、部品に加える電気信号などによって、電気の流れ方を変えられます。その性質が、さまざまな電子部品に利用されています。[1][2]

電気の流れを利用する

計算に使われるチップには、電気の流れを切り替える小さな部品がたくさん組み込まれています。その代表が、トランジスタです。

例えば、手で押すスイッチは、人が操作して電気を流したり止めたりします。トランジスタは、電気信号によって電気の流れを切り替えたり、調整したりできる部品です。

こうした部品を配線でつなぎ、働きを組み合わせると、計算や機器の制御などができる回路になります。多くの部品や配線をまとめて作り込んだものが、IC〈集積回路〉です。[1][2]

つまり、半導体という材料の性質を利用して、機器の中で働く電子部品を作っているのです。

ニュースで見かける半導体

「半導体」は、材料そのものを指す場合もあれば、それを利用した電子部品や、関連する産業全体を指す場合もあります。[1]

そのため、シリコン、シリコンウェハ、チップという言葉が出てきたら、製造のどの段階の話なのかを分けると整理しやすくなります。

シリコンを使うICを例にすると、次のような違いがあります。

言葉何を指す?役割・位置付け
シリコン半導体材料の一種。日本語ではケイ素電子部品を作るための代表的な材料
シリコンウェハ高純度のシリコンを薄い円盤状に加工したもの多数の電子回路を作る土台
チップ電子回路を作り込んだ半導体の小片計算や記憶などの機能を担う部分
パッケージチップを保護し、外部と接続できるようにしたもの機器の基板に取り付けて利用しやすくする

シリコンからウェハを作り、その上に多数の回路を形成します。回路ごとに切り分けたチップを、外部と接続できるように組み立て、パッケージで保護すると、機器に使う半導体製品になります。[1][3][4]

パッケージには、外部へ電気信号を伝えることや、発生した熱を逃がすことなどの役割もあります。一つのパッケージに複数のチップを組み込む製品もあります。[4]

日常的には、チップや、それを製品の形にしたものが「半導体」と呼ばれます。ニュースで「半導体の生産が増えた」と聞いたときも、材料なのか、どのような部品なのかに注目すると、話の意味をつかみやすくなります。[2]

半導体はどこに?

半導体は、スマホやパソコン、家電、充電器、自動車など、身近なさまざまな機器に使われています。[1][3]

身近な機器半導体が支える働きの例
スマートフォン写真の処理、データの保存、通信、電源の調整
パソコン計算、画面表示に必要な処理、データの記憶
充電器電気を充電に適した状態へ変換・調整する
エアコン温度の情報を使った制御、モータに使う電力の調整
洗濯機運転手順の制御、モータに使う電力の調整
自動車車内のさまざまな制御、周囲や車両の状態の検出

機器の外側からは見えにくくても、内部の基板などに取り付けられ、機能を支えています。

エアコンを例にすると、温度を調べる部分、運転を決める部分、モータに使う電力を調整する部分が連携します。冷たい空気を作る機械の働きと、それを動かすための電子回路の働きが組み合わさっているのです。[1][2]

半導体の主な役割

半導体の役割は、「小さな部品が、どんな仕事をしているか」で考えると分かりやすくなります。ここでは、代表的な働きを六つに整理します。

計算する

スマホが写真の明るさを整えたり、パソコンが表計算をしたりするとき、内部ではデータを使った計算が行われています。

こうした情報の処理を担うのが、ロジック半導体です。CPUはその代表例で、さまざまな計算や処理を進める役割を持ちます。[2]

電卓の足し算はもちろん、写真や音、文字の情報を扱う処理にも、数値の計算が使われています。

覚える

写真、動画、連絡先などのデータを保持するのが、メモリ半導体です。

例えば、スマホの写真の保存などに使われるNAND型フラッシュメモリは、電源を切ってもデータを保持できます。[5]

一方、メモリには、処理の途中で使うデータを一時的に置くものもあります。「計算する部品」と「データを置いておく部品」が連携することで、機器はさまざまな処理を進められます。[1][2]

感じ取る

光、温度、動きなどの状態を調べるのが、センサとしての働きです。

スマホのカメラに使われるイメージセンサは、入ってきた光を電気信号に変えます。その情報を処理すると、写真や映像として利用できます。[6]

温度の検出や、スマホの傾きを調べる機能にもセンサが使われます。周囲や機器自身の状態を、電子回路が扱える情報にする役割です。[1]

電気を調整する

機器を動かすには、その部分に合った状態の電気を届ける必要があります。電気の流れや電圧などを調整・変換する回路にも、半導体が使われています。

例えば、充電器で電気を充電に適した状態へ変えたり、エアコンのモータに使う電力を調整したりする働きです。電力の変換や制御を担う代表的な部品が、パワー半導体です。[1][2]

情報をやりとりする

スマホがWi-Fiや携帯電話の回線で情報を送受信するときも、半導体を使った通信回路が働きます。

送りたいデータを通信に使う信号に整えたり、届いた信号からデータを取り出したりする役割です。通信は、半導体の回路と、アンテナなどの部品や通信設備との連携で実現します。[1][7]

光を出す

照明や機器の表示ランプに使われるLEDも、半導体を利用した部品です。電気を光に変える働きを持っています。[1]

このように、半導体には計算や記憶に加え、検出、電力の調整、通信、発光など、さまざまな役割があります。一つのチップや製品に、複数の働きを組み込む場合もあります。[2][4]

スマホの中の連携

ここで、スマホで写真を撮って友達に送る場面を考えてみましょう。

画面を数回操作するだけでも、内部では複数の仕事が進んでいます。

操作や場面内部で行われることの例
カメラを向けるイメージセンサが光を受け、電気信号に変える
写真を撮る信号を読み出し、色や明るさなどを整えて画像データにする
写真を保存するメモリに画像データを書き込む
写真を送る通信回路などを通じて、画像データを送信する

さらに、処理の途中のデータを一時的に置くメモリや、各部分へ電気を届ける電源回路も働いています。[1][5][6][7]

これらは役割を説明するための流れです。実際には、複数の働きを一つのチップにまとめたり、いくつかの処理を並行して進めたりします。

「写真を撮って送る」という一つの体験を、検出・計算・記憶・通信・電源の役割分担が支えていると考えると、半導体の必要性が具体的に見えてきます。

AIを支える半導体

AIが写真に写ったものを見分けたり、質問への回答を作ったりするときにも、計算と記憶が必要です。

例えば、画像を扱うAIでは、色や明るさなどの情報を数値として扱い、そのデータを使って計算します。文章を扱うAIも、文字や単語などに対応する数値を処理して結果を求めます。[8][10]

計算を実際に進める

AIの処理を実際に進めるのが、CPUやGPU、AI向けの専用回路などです。GPUは、多くの計算を並行して進めることを得意とし、AIの計算にも利用されています。[8]

身近な言葉でいえば、計算を担当する部品です。大規模なAIでは、扱うデータや計算が多くなるため、それらを効率よく処理することが重要になります。

どの部品を使うかは、AIの種類や機器、求める速さなどによって異なります。AIの用途に合わせて、さまざまな半導体が使われています。[2][8]

必要なデータを置く

計算に必要なデータを保持するのが、メモリです。

AIでは、入力された情報に加え、学習によって調整された数値や、処理の途中のデータなどを扱います。これらをメモリに置き、必要に応じて読み出しながら計算を進めます。[9]

計算の担当者が優秀でも、必要な資料を十分に置けず、取り出すのにも時間がかかれば仕事は進みにくくなります。それと同じように、AIでも計算能力に加え、メモリの容量やデータのやりとりが重要になります。[8][9]

学ぶときも使うときも

データから学ぶタイプのAIでは、特徴や傾向を学ぶ「学習」と、学習した結果を使って判定や回答を行う「推論」を区別します。

猫の画像を見分けるAIを例にすると、多くの画像から見分けるための特徴を学ぶのが学習、新しく届いた画像について結果を求めるのが推論です。どちらの段階でも、半導体が計算やデータの保持を支えます。[8][9][10]

AIに半導体が使われるのは、AIの働きに必要な計算と記憶を、実際の機器の中で実行するためです。 機器を動かす電源回路なども含め、複数の役割がAIを支えています。

半導体不足の原因

半導体不足は、機器を作るために必要な種類の半導体が、必要な時期に、必要な量だけ手に入らない状況です。

材料、生産設備、工場、組み立て、輸送などがつながって製品が届くため、途中のどこかに問題が起きても供給に影響します。こうした供給のつながりを、サプライチェーンと呼びます。[11][12]

必要な量が急に増える

パソコンや家電などの需要が急に増えると、それらに組み込む半導体も多く必要になります。

2020年以降の世界的な半導体不足では、在宅勤務やオンライン学習などに伴う電子機器の需要増加と、供給側の混乱が重なりました。これは過去の不足の事例であり、すべての時期・種類の不足が同じ原因で起こるという意味ではありません。[11][12]

増産には時間がかかる

半導体は、多くの工程を通して作られます。生産を増やすには、必要な製造装置や材料を確保し、設備を整え、製品を安定して作れる状態にする必要があります。

工場の新設や生産能力の拡大にも時間がかかるため、注文が急増しても、その増加分をすぐに作れるとは限りません。[11]

供給の途中で止まる

災害、火災、設備の不具合、工場の操業停止なども、供給を滞らせる原因になります。国や地域をまたぐ取引や輸送への影響も、調達を難しくする場合があります。[11][12]

材料が用意できていても、回路を作る工程や組み立てる工程が止まれば、完成した部品は届きません。原材料から機器に使う部品になるまでのつながりが重要です。

必要な種類が違う

同じ半導体でも、計算する部品と、データを保存する部品では役割が違います。さらに、同じ役割の部品でも、機器が求める機能や接続方法などが異なります。[2][4]

そのため、別の半導体が多く生産されていても、必要な部品をそのまま補えるわけではありません。

自動車などは多数の部品を組み合わせて作られます。必要な部品の一部がそろわないことで、完成品の生産が遅れる場合があります。実際に、過去の半導体不足では自動車の減産などが起こりました。[12]

ニュースを読むときは、**「どの種類の半導体が、どの用途で、なぜ足りないのか」**に注目すると、機器への影響を理解しやすくなります。

役割のまとめ

半導体は、もともとは材料の性質を表す言葉です。その性質を利用して作られた電子部品も、広く半導体と呼ばれています。

暮らしの中では、計算する、覚える、感じ取る、電気を調整する、情報をやりとりする、光を出すといった働きを担っています。

スマホや家電、AIの機器は、こうした役割の組み合わせで動きます。必要な部品が不足すれば、機器の生産にも影響することがあります。

まずは身近な機器を一つ選び、「何を調べ、何を計算し、どこにデータを置いているのだろう」と考えてみてください。半導体の名前を覚える前に、その仕事を思い浮かべることが、理解の入口になります。

参考資料

研究機関・企業・業界団体などの公式資料を参照しています。確認日:2026年10月25日。半導体不足の事例は、各資料が扱う過去の出来事として紹介しています。

  1. NEDO:「半導体」知っておきたい基礎知識
  2. 産業技術総合研究所:ロジック半導体とは?
  3. SUMCO:製品情報・シリコンウェーハについて
  4. ルネサス:パッケージの機能と種類
  5. キオクシア:NAND型フラッシュメモリとは
  6. ソニーセミコンダクタソリューションズ:イメージセンサー共通
  7. 経済産業省 中国経済産業局:半導体とは、そもそも何?
  8. NVIDIA:Why GPUs Are Great for AI
  9. NVIDIA:Jetsonでメモリ効率を最大化して大規模なモデルを実行
  10. NVIDIA:Generative AI〈生成AIの学習と仕組み〉
  11. Rapidus:なぜ半導体不足が起きたのか?その理由を解説
  12. ジェトロ:半導体―需要急増、各国で供給能力強化を急ぐ〈2021年9月24日〉

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