半導体は、成膜・フォトリソグラフィ・エッチング・イオン注入・CMPなど、さまざまな工程を繰り返して作られます。
しかし、装置で加工しただけでは、
「狙った通りの形になっているのか?」
「膜は正しい厚さで付いているのか?」
「ゴミや傷などの欠陥はないのか?」
「回路の位置はずれていないのか?」
といったことは分かりません。
そこで重要になるのが、検査・計測工程です。
半導体工場では、製造の最後にまとめて検査するだけではありません。
実際には、
加工する → 測る → 異常を探す → 原因を調べる → 製造条件を修正する
というサイクルを製造工程の途中で何度も繰り返しています。
この記事では、
- 半導体の「計測」と「検査」の違い
- CD-SEMとは何か
- 膜厚はどうやって測るのか
- ウェーハの欠陥をどうやって見つけるのか
- レビューSEMの役割
- 電気検査との違い
- なぜ検査・計測が歩留まり改善につながるのか
について、初心者向けに分かりやすく解説します。

半導体の検査・計測とは?
まず、「検査」と「計測」は似た言葉ですが、役割は少し異なります。
簡単に整理すると、
計測=どれくらいできているかを数値で測る
検査=異常や欠陥がないかを探す
と考えると分かりやすいです。
例えば、半導体回路の配線幅が狙い通りに30nmになっているかを確認するのは「計測」です。
一方で、
- ゴミが付着していないか
- パターンが欠けていないか
- 傷がないか
- 異物が混入していないか
といった異常を探すのは「検査」です。
さらに、検査で見つかった異常をSEMなどで詳しく観察して、
「この欠陥は何なのか?」
「どの工程で発生したのか?」
を調べる作業もあります。
これをレビュー・解析と呼びます。
つまり半導体製造では、大きく分けると次のようになります。
| 種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 計測 | 寸法・膜厚・位置ずれなどを測る |
| 検査 | ゴミ・傷・パターン欠陥などを探す |
| レビュー・解析 | 発見した欠陥を詳しく調べる |
| 電気検査 | 完成した回路が正常に動くか確認する |
「検査」という言葉ですべてをまとめてしまいがちですが、それぞれ役割が異なります。
なぜ半導体は製造途中で何度も測るの?
半導体は、非常に多くの工程を繰り返して作られます。
例えば簡単にすると、
成膜
↓
フォトリソグラフィ
↓
エッチング
↓
イオン注入
↓
成膜
↓
CMP
↓
配線形成
といった工程を何度も繰り返し、最終的な半導体チップを作っていきます。
ここで重要なのが、
「加工が終わるたびに、狙った通りにできているとは限らない」
という点です。
例えば成膜工程で、
狙い:100nm
実際:90nm
になっていたとします。
この状態に気付かず次の工程へ進んでしまうと、その後の加工にも影響する可能性があります。
また、フォトリソグラフィ後の回路パターンが設計より太かったり、エッチング後の穴が十分に掘れていなかったりすることもあります。
そこで製造途中で計測を行い、
「今の工程は正常だったか?」
を確認します。
異常があれば製造条件を調整し、それ以上不良品が増えることを防ぎます。
つまり検査・計測は、
完成品の良品・不良品を分けるだけの工程ではありません。
製造工程そのものを安定させるために必要な工程なのです。
半導体では何を測っている?
半導体製造では非常に多くの項目を測定します。
代表的なものとして、
- 回路の線幅
- ホールの直径
- 膜厚
- パターンの位置ずれ
- ウェーハ上の欠陥
- 表面形状
などがあります。
それぞれ見ていきましょう。
① 回路の線幅や穴径を測る「CD-SEM」
半導体製造で非常によく使われる計測装置の一つが、
CD-SEM
です。
CDとは、
Critical Dimension
の略で、日本語では「重要寸法」などと呼ばれます。
SEMは、
Scanning Electron Microscope(走査電子顕微鏡)
の略です。
つまりCD-SEMとは、
電子線を使って半導体の微細パターンを観察し、その寸法を測る装置
です。
例えば、
- 配線の幅
- レジストパターンの幅
- コンタクトホールの直径
- エッチング後のパターン寸法
などを測ります。
なぜ線幅を測る必要がある?
フォトリソグラフィで30nmの線を作ろうとしても、実際には必ず完全な30nmになるとは限りません。
例えば、
設計値:30nm
実測値:35nm
になっていたとします。
少しの違いに見えますが、半導体では非常に小さな回路を大量に作っているため、この差が電気特性や性能に影響することがあります。
そのため、
フォトリソグラフィ
↓
CD測定
↓
エッチング
↓
再びCD測定
といったように、工程途中で寸法を確認します。
CD-SEMは、半導体の微細化を支える非常に重要な計測装置です。
② 薄膜の厚さを測る
半導体では、シリコンウェーハの上にさまざまな薄膜を形成します。
例えば、
- SiO₂などの絶縁膜
- SiNなどの保護膜
- 金属配線膜
- 半導体膜
- レジスト膜
などです。
成膜工程では、
「膜が付いたかどうか」
だけではなく、
「狙った膜厚になっているか」
が重要です。
例えば、
狙い:100nm
実際:105nm
だった場合、その差が許容範囲内かどうかを確認します。
膜厚が大きくずれると、その後のエッチング時間や電気特性にも影響する可能性があります。
エリプソメータで膜厚を測る
薄膜測定でよく使われる装置の一つが、
エリプソメータ
です。
エリプソメータでは、光を薄膜に当てます。
すると、膜の表面や界面で光が反射し、光の偏光状態が変化します。
この変化を測定し、モデルと比較することで、
- 膜厚
- 屈折率 n
- 消衰係数 k
などを求めます。
つまり、膜を削ったり壊したりすることなく膜厚を測れることが大きな特徴です。
半導体製造では大量のウェーハを扱うため、ウェーハを壊さず測定できることは非常に重要です。
③ パターンの位置ずれを測る「重ね合わせ計測」
半導体回路は、一枚の平面にすべての回路を作るわけではありません。
何層ものパターンを上下に重ねながら作っていきます。
イメージとしては、
透明なシートに描いた回路を何枚も重ねていく
ようなものです。
ここで問題になるのが、
位置ずれ
です。
例えば、
1層目の配線
と
2層目のコンタクトホール
の位置がずれてしまうと、電気的に正しく接続できなくなる可能性があります。
そこで使われるのが、
重ね合わせ計測(Overlay Measurement)
です。
Overlayとは?
Overlayとは、
上下のパターンがどれだけずれているか
を表します。
例えば、
1層目
│
●
2層目
│
●
のように位置がずれてしまうと、正しく回路が形成できません。
半導体が微細化するほど許される位置ずれも小さくなるため、Overlayの管理は非常に重要になります。
欠陥検査では何を探している?
ここまでは主に「計測」について説明しました。
次は「検査」です。
半導体の欠陥検査では、ウェーハ上に異常がないかを探します。
代表的な欠陥には、
- パーティクル
- 傷
- 異物
- パターン欠け
- パターン残り
- エッチング残渣
- 配線の断線につながる異常
- 配線同士のショートにつながる異常
などがあります。
半導体のパターンは非常に小さいため、人が目で見て確認することはできません。
そのため専用の検査装置を使ってウェーハ全体を確認します。
ウェーハ欠陥検査装置はどうやって異常を見つける?
欠陥検査にはさまざまな方式があります。
代表的なのが、光を利用した検査です。
簡単なイメージは、
光をウェーハへ照射
↓
反射光・散乱光を検出
↓
正常部分と違う場所を発見
↓
欠陥の位置を記録
という流れです。
例えばウェーハ表面にパーティクルが付着していると、正常な表面とは光の反射や散乱の仕方が変わります。
その違いを利用して異常を検出します。
欠陥検査装置で重要なのは「位置を見つけること」
ここは非常に重要です。
欠陥検査装置の役割は、必ずしもその場で、
「これは金属パーティクルです」
「これはレジスト残渣です」
と原因まで完全に判断することではありません。
まず重要なのは、
ウェーハのどこに欠陥があるのかを見つけること
です。
例えば、
X座標:○○
Y座標:○○
という形で欠陥位置を記録します。
その情報を使って、次の装置で詳しく観察します。
欠陥を見つけた後は「レビューSEM」で詳しく見る
欠陥検査装置で異常を見つけた後に活躍するのが、
レビューSEM
です。
欠陥検査装置
↓
欠陥位置を検出
↓
座標情報を取得
↓
レビューSEM
↓
欠陥を高倍率で観察
という流れになります。
レビューSEMでは電子線を使い、検出された欠陥を非常に細かく観察します。
例えば、
- パーティクルなのか
- パターンが欠けているのか
- エッチング残りなのか
- 傷なのか
などを詳しく確認します。
CD-SEMとレビューSEMは何が違う?
CD-SEMとレビューSEMは、どちらもSEMを利用するため、初心者には違いが分かりにくい装置です。
大きな違いは「目的」です。
CD-SEM
目的:
寸法を測る
代表例:
- 配線幅
- レジスト幅
- ホール径
レビューSEM
目的:
欠陥を詳しく観察する
代表例:
- パーティクル
- パターン欠け
- 残渣
- 傷
つまり、
CD-SEM=測る
レビューSEM=欠陥を見る
と覚えると分かりやすいです。
代表的な半導体検査・計測装置まとめ
ここまで登場した装置を整理すると、次のようになります。
| 装置 | 主に確認するもの |
| CD-SEM | 線幅・穴径など |
| エリプソメータ | 膜厚・光学特性 |
| 重ね合わせ計測装置 | 上下層の位置ずれ |
| 欠陥検査装置 | パーティクル・傷・パターン異常など |
| レビューSEM | 発見された欠陥の詳細 |
実際の半導体工場では、目的に応じてさまざまな計測・検査装置が使われています。
一つの装置ですべてを調べるのではなく、
「高速に探す装置」と「詳しく調べる装置」
を使い分けることも重要なポイントです。
検査・計測結果は製造条件の改善に使われる
半導体の検査・計測で最も重要なのは、
測定した後、そのデータをどう使うか
です。
例えばCD-SEMで測定した結果、
狙い:30nm
測定:35nm
だったとします。
ただ測って記録するだけでは意味がありません。
なぜ太くなったのかを調べます。
例えば、
- 露光条件
- フォーカス
- レジスト条件
- 現像条件
- エッチング条件
などが関係している可能性があります。
原因を調査し、製造条件を修正します。
つまり、
加工
↓
計測
↓
異常発見
↓
原因解析
↓
条件修正
↓
再び加工
というループを繰り返します。
欠陥検査も同じ考え方
例えば、ある工程後に大量のパーティクルが見つかったとします。
その場合、
「このウェーハは不良だから捨てよう」
だけで終わるわけではありません。
むしろ重要なのは、
「なぜパーティクルが増えたのか?」
を調べることです。
例えば、
- 装置内部が汚れている
- 搬送系から発塵している
- 薬液に異物が混入している
- 前工程で残渣が発生している
など、さまざまな原因が考えられます。
原因を見つけて対策すれば、その後に作るウェーハの不良を減らせます。
これが、
歩留まり改善
につながります。
歩留まりとは?
半導体の記事でよく登場するのが、
歩留まり(Yield)
という言葉です。
例えば100個のチップを作り、
90個が良品だった場合、
歩留まりは、
90%
です。
逆に10個が不良になります。
半導体は大量生産するため、歩留まりが少し変わるだけでも、生産できる良品数に大きな差が生まれます。
そのため、
欠陥を早く見つける
↓
原因を調べる
↓
製造条件を改善する
↓
不良を減らす
という活動が非常に重要なのです。
検査・計測装置は、歩留まりを高めるために欠かせない存在です。
「検査」と「電気検査」は違う
半導体では、
ウェーハテスト
という検査工程もあります。
ここまで説明してきた検査・計測と、ウェーハテストは目的が少し違います。
ここまで説明した検査では、
- 寸法
- 膜厚
- 欠陥
- 位置ずれ
など、
半導体が正しく作られているか
を確認していました。
一方ウェーハテストでは、
完成した回路へ実際に電気信号を与えて、正常に動作するか
を確認します。
ウェーハテストのイメージ
ウェーハ上には大量の半導体チップが並んでいます。
その一つひとつへ電気的に接触し、
- 正常に動作するか
- 電圧や電流は正常か
- 必要な性能を満たしているか
などを確認します。
正常なチップは良品として後工程へ進み、不良チップは取り除かれます。
つまり、
製造途中の検査・計測
=正しく加工できているか確認
ウェーハテスト
=作った回路が正常に動くか確認
という違いがあります。
なぜ半導体が微細化すると検査も難しくなるの?
半導体は年々微細化しています。
回路が小さくなると、
当然、問題となる欠陥も小さくなります。
例えば昔なら影響が小さかったサイズのパーティクルでも、微細化した回路では配線を完全にふさいでしまう可能性があります。
つまり、
回路が小さくなる
↓
許容できる欠陥も小さくなる
↓
より小さな欠陥を発見する必要がある
ということです。
また最近では、半導体構造そのものも複雑になっています。
例えば、
- 3D NAND
- FinFET
- GAA
- 高アスペクト比ホール
- 多層配線
などでは、単純な横方向の寸法だけではなく、
高さ・深さ・側壁形状・3次元構造
まで重要になります。
そのため半導体の微細化・3次元化が進むほど、検査・計測技術の重要性も高まっています。
検査・計測工程を一言でまとめると?
半導体の検査・計測工程は、
「作ったものが狙い通りになっているか確認し、その結果を次の製造へ反映する工程」
です。
製造装置だけが高性能でも、安定して半導体を大量生産することはできません。
加工した結果を正しく測り、異常を早く発見し、その原因を製造工程へフィードバックする必要があります。
まとめ
今回は、半導体の検査・計測について解説しました。
重要なポイントを整理すると、
計測
→ 寸法・膜厚・位置ずれなどを数値で測る
検査
→ パーティクルや傷、パターン異常などを探す
レビュー
→ 発見した欠陥をSEMなどで詳しく観察する
電気検査
→ 完成した回路が正常に動くか確認する
という違いがあります。
代表的な装置としては、
- CD-SEM
- エリプソメータ
- 重ね合わせ計測装置
- 欠陥検査装置
- レビューSEM
などがあります。
そして、検査・計測で最も重要なのは、
測って終わりではない
ということです。
製造
↓
検査・計測
↓
異常発見
↓
原因解析
↓
製造条件を修正
というサイクルを繰り返すことで、不良を減らし、半導体の歩留まりを高めています。
半導体製造というと、露光装置や成膜装置、エッチング装置などの「加工する装置」が注目されがちです。
しかし実際には、
「正しく作れているかを測る技術」も、半導体製造を支える重要な技術の一つです。
半導体の製造工程全体を理解したい方は、成膜・フォトリソグラフィ・エッチング・洗浄・CMPなどの記事もあわせて確認してみてください。


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