半導体洗浄装置とは?枚葉式・バッチ式の違いと洗浄・乾燥の仕組みを解説

装置・材料

半導体工場では、回路を作る途中で何度もウェーハを洗浄します。取り除くのは、目に見える汚れだけではありません。微小な粒子、金属汚染、有機物、加工後の残留物などが、次の工程や製品の特性に影響するためです。

こうした汚染を除去し、必要な膜や回路を傷めずに次の工程へ渡すのが、半導体洗浄装置の役割です。

この記事では、薬液や超純水を使うウェット洗浄装置を中心に、枚葉式とバッチ式の違い、装置内部の構成、リンスと乾燥の仕組みを解説します。

半導体洗浄装置は何をする装置?

洗浄装置は、ウェーハを保持・搬送し、決められた条件で薬液処理、リンス、乾燥などを行う装置です。目的は、単に表面をきれいにすることではなく、次の成膜や加工に適した表面状態を整えることにあります。

除去したいもの問題になる例洗浄で考えること
パーティクル(微粒子)パターン欠陥や局所的な加工不良粒子を離し、再付着させずに運び去る
金属汚染電気特性や信頼性への影響表面から除去し、薬液や配管からの再汚染も防ぐ
有機物成膜や表面処理への影響対象に合う薬液や処理方法を選ぶ
加工後の残留物接続不良や後工程への影響残留物を除去し、必要な膜を残す

自然酸化膜の除去など、表面の薄い膜を意図的に取り除く処理もあります。ただし、酸化膜は常に不要とは限りません。工程の目的によって、除去する場合と残す場合があります。

洗浄条件は「除去能力が高いほどよい」とは決められません。強い処理によって、必要な材料が削れたり、微細な構造が傷んだりする可能性があるからです。

枚葉式とバッチ式の違い

ウェット洗浄装置は、ウェーハを一枚ずつ処理する枚葉式と、複数枚をまとめて処理するバッチ式に大きく分けられます。製造現場では、要求品質や生産条件に応じて使い分けます。[1]

枚葉式:一枚ごとに処理条件を制御する

代表的な枚葉式装置では、水平に保持したウェーハを回転させ、ノズルから薬液や超純水を供給します。液体を表面に広げながら、汚染物や処理後の液を排出します。

回転数、ノズル位置、流量、液温、処理時間などを調整して、狙った結果を得ます。保持方法や裏面・端部の処理方法は、装置によって異なります。

一枚ごとに処理するため、条件を個別に設定しやすいことが特徴です。ただし、前の処理で使った液やチャンバーの状態が次のウェーハに影響しないよう、装置側の清浄度管理も必要です。

また、「枚葉式」は装置全体で一枚しか処理できないという意味ではありません。複数の処理チャンバーを備え、別々のウェーハを並行して処理する構成もあります。[2・3]

バッチ式:複数枚を槽に入れてまとめて処理する

代表的なバッチ式装置では、複数枚のウェーハを保持し、薬液槽やリンス槽に浸して処理します。薬液槽、リンス槽、乾燥部などを組み合わせた装置は、ウェットステーションとも呼ばれます。

搬送機構がウェーハのまとまりを各処理部へ運び、必要な順番で処理を進めます。一度に多くのウェーハを扱える一方、槽内の温度や液の流れ、薬液の状態を適切に管理することが大切です。

薬液を循環して使う構成では、フィルターによる粒子管理に加え、濃度、汚染物の蓄積、薬液交換のタイミングなども確認します。具体的な処理枚数や槽構成は装置によって変わります。[1・4]

比較するときは「装置全体」で考える

比較項目枚葉式バッチ式
基本的な処理単位一枚ずつ複数枚をまとめて
代表的な処理方法回転するウェーハに液を供給ウェーハを液槽に浸す
条件の設定一枚ごとの調整を行いやすい同じ処理条件を複数枚に適用
均一性の確認面内分布や一枚ごとのばらつき面内分布に加え、槽内の位置による差
生産性を左右する要素チャンバー数、処理時間、搬送能力処理枚数、槽構成、処理時間、搬送能力
薬液管理供給量、液の切り替え、残液など槽内の液質、循環、交換条件など

薬液使用量や処理能力の優劣は、方式だけでは決まりません。枚葉式でも供給時間が長ければ使用量は増えます。バッチ式でも薬液の更新条件やリンス量によって消費量は変わります。

比較する際は、同じ品質条件で一枚を処理するための液量、時間、設備面積などを見る必要があります。

枚葉式洗浄装置の中はどうなっている?

一般的な構成例を、ウェーハの通り道と薬液の通り道に分けて見てみましょう。すべての機種が同じ構造を持つわけではありません。

ウェーハの通り道:搬入から処理チャンバーへ

構成要素主な役割
ロードポートFOUPなどのウェーハ容器を装置に接続する
搬送ロボットウェーハを取り出し、処理部へ運ぶ
チャック・保持機構処理中のウェーハを支え、必要に応じて回転させる
ノズル薬液や超純水などを狙った位置に供給する
カップ飛散した液を受け、排液側へ導く
排気機構処理空間の気流や蒸気の排出を管理する

FOUPはウェーハを収納・搬送する容器です。搬送ロボットは、ウェーハが処理部に正しく置かれたことや、他の機構と干渉しないことを確認しながら動きます。

複数チャンバーを持つ装置では、洗浄そのものの時間だけでなく、搬送の待ち時間も生産性に影響します。

薬液の通り道:供給元からノズルへ

薬液供給系には、配管、バルブ、フィルター、流量や圧力を確認する機器などが組み合わされます。必要に応じて、温度調整や濃度管理の機能も設けられます。

バルブは流路を開閉し、流量を調整する機器は供給量を整えます。フィルターは対象となる粒子などを減らしますが、すべての不純物を一つのフィルターで除去できるわけではありません。

配管や部品には、薬液に耐えることと、不純物を出しにくいことの両方が求められます。材質の選定は薬液の種類や温度によって変わります。

薬液の切り替えでは、配管やノズルに残った液も考慮します。装置は、決められたシーケンスで供給・停止・置換などを行い、処理の再現性を保ちます。

洗浄は「薬液処理→リンス→乾燥」で考える

基本的な流れは、薬液で必要な処理を行い、リンスで薬液や汚染物を洗い流し、乾燥させるというものです。実際には、複数種類の薬液処理とリンスを繰り返す場合があります。

1.薬液処理:化学作用と物理作用を使う

薬液処理では、汚染物を溶かす、分解する、表面から離れやすくするなどの作用を利用します。対象となる汚染と、残したい材料に合わせて処理を選びます。

液の流れや、二流体スプレー、メガソニックなどの物理作用を利用する方式もあります。メガソニックは高周波の音響エネルギーを用いる技術です。

ただし、強い物理作用は微細構造を傷める可能性もあります。汚れの除去とダメージの抑制を合わせて評価します。[5]

2.リンス:薬液と汚染物を残さない

リンスは、超純水などで処理後の薬液や汚染物を洗い流す工程です。超純水は、イオン、有機物、粒子などを極めて低いレベルまで減らした水です。

薬液が残ると、意図しない反応が続いたり、乾燥後に残留物が生じたりする可能性があります。供給した水が表面全体に行き渡り、処理液が十分に置き換わることが重要です。

バッチ式では槽内の置換状態、枚葉式では液の広がりや流れなども関係します。リンス時間を延ばせば必ず最適になるわけではなく、品質と水使用量、処理時間を合わせて考えます。

3.乾燥:液を除去しながら構造を守る

乾燥には、回転で液を排出する方法や、IPA(イソプロピルアルコール)を利用する方法などがあります。装置や対象によって、減圧や超臨界流体を使う技術もあります。[6・7]

乾燥では、水滴がなくなるだけでなく、ウォーターマークや残留物を抑え、微細な構造を壊さないことも必要です。

なぜ乾燥でパターンが倒れるのか?

細く背の高い構造の間に液が残ると、乾燥中に液面が変化し、表面張力に関係する毛管力などが構造に働きます。構造がその力に耐えられない場合、隣の構造に接触して倒れることがあります。

例えば、細い柱が密集していると、液の抜け方や構造の強さが重要になります。単に「強く回して早く乾かす」だけでは解決できません。

IPAのような表面張力の低い液を利用することは対策の一つですが、それだけですべての倒壊を防げるわけではありません。材料や形状、乾燥中の挙動を含めて検討します。[6]

超臨界乾燥は、気体と液体の区別がなくなる状態を利用し、通常の液体が蒸発するときの気液界面による力を抑える技術です。対応した流体、温度・圧力の制御、専用チャンバーが必要になります。通常の水を単に加熱して乾かす方法とは異なります。[7]

洗浄装置の性能は何で評価する?

除去できたか、必要なものを残せたか

洗浄前後の粒子や汚染を確認するとともに、必要な膜の減少や表面状態の変化、パターンの損傷も調べます。

粒子が減っていても、回路が傷んでいれば適切な処理とはいえません。また、表面だけでなく、裏面や端部の汚染も対象になります。[3]

同じ結果を繰り返せるか

一枚の中で処理にむらがないか、ウェーハごとの差が小さいか、時間が経過しても結果が安定するかを確認します。

複数チャンバーを持つ装置では、チャンバー間の差も重要です。バッチ式では、槽内の位置や薬液の使用履歴による違いにも注目します。

工場で効率よく運用できるか

処理枚数に加え、搬送、清掃、部品交換、調整などを含めて評価します。装置が止まる時間が長ければ、処理速度が高くても生産量は伸びません。

薬液、超純水、電力、排気、排液処理などの負担もあります。装置価格だけでなく、必要な品質を維持しながら継続して運用するための費用を見ることが大切です。

代表的な洗浄装置メーカー

メーカー公開されている製品・分野の例読み解くポイント
SCREEN枚葉式洗浄装置、バッチ式洗浄装置、スピンスクラバなど処理方式や対象工程、乾燥技術を確認
東京エレクトロン枚葉式のCELLESTAシリーズ、バッチ式のEXPEDIUSシリーズ枚葉・バッチの違いと各製品の処理対象を確認
Lam ResearchEOSなどのウェット洗浄製品対象工程や欠陥抑制、生産性に着目

同じメーカーでも、用途に応じて複数の製品を展開しています。会社名だけで性能を判断せず、洗いたい材料や構造、必要な清浄度、乾燥方法を確認すると理解しやすくなります。[2・3・4・8]

よくある疑問

枚葉式はバッチ式より必ず優れている?

必ずしもそうではありません。個別の条件制御、まとめて処理する効率、対象材料、設備面積などを踏まえて選びます。実際の処理能力は、チャンバー数や槽構成にも左右されます。

洗浄装置は汚れを落とすだけ?

汚染除去に加え、不要な膜の除去や、次工程に向けた表面状態の調整に使われる場合もあります。何を取り除き、何を残すかは工程ごとに異なります。

洗浄後は自然乾燥すればよい?

乾燥中の残留物やパターン倒壊を抑えるため、液の除去方法や雰囲気を制御します。洗浄と乾燥は、別々に最適化するだけでなく、一連の処理として設計する必要があります。

まとめ

半導体洗浄装置は、薬液処理・リンス・乾燥を通じて、次の工程に適したウェーハの表面状態を作る装置です。

枚葉式は一枚ずつ、バッチ式は複数枚をまとめて処理します。ただし、処理方式だけで性能やコストの優劣は決まりません。対象となる汚染、残したい材料、微細構造、生産条件に応じて使い分けます。

装置を見るときは、ウェーハの搬送、薬液の供給、排液・排気、乾燥までをつなげて考えてみてください。「きれいにする」ために、多くの機構と制御技術が協力していることが分かります。

関連記事

参考資料

  1. SCREEN:洗浄工程
  2. SCREEN:製品情報
  3. 東京エレクトロン:CELLESTAシリーズ
  4. 東京エレクトロン:EXPEDIUSシリーズ
  5. 東京エレクトロン:CELLESTA MS2の紹介
  6. SCREEN:半導体洗浄時におけるナノ構造物の倒壊メカニズム
  7. 東京エレクトロン:超臨界乾燥を用いるCELLESTA SCD
  8. Lam Research:EOS Product Family

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