超純水とは?純水との違い・半導体で使う理由・製造と水質管理の仕組み

装置・材料

半導体工場では、ウェーハを加工する途中で何度も水を使います。ただし、使うのは水道水ではなく、不純物を極めて少なくした「超純水」です。

「きれいな水なら、純水でもよいのでは?」「18.2 MΩ・cmという数字は何を意味する?」「フィルターを通せば作れる?」

超純水を理解するポイントは、純度の高さだけではありません。どの不純物を減らし、どう品質を確かめ、使用する場所まで維持するかが重要です。この記事では、半導体製造での用途から製造設備、水質管理まで順番に解説します。

超純水とは?水道水・純水との違い

超純水〈UPW:Ultrapure Water〉は、イオン、有機物、微粒子などの不純物を極めて低い水準まで減らした水です。

水道水も、飲用などの目的に合わせて処理・管理されています。しかし、含まれるミネラルなどは半導体製造では汚染源になり得ます。「人が使う水として適切か」と「微細な回路の製造に適切か」では、求める品質が異なります。

水の種類基本的な考え方半導体用途で見るポイント
水道水生活用水として処理・管理された水ミネラルなどが含まれ、そのまま精密な洗浄には使えない
純水イオンなどの不純物を取り除いた水製造方法や用途によって水質が異なる
超純水イオンに加え、有機物・微粒子なども厳しく管理する高純度の水複数の指標で、工程が必要とする品質を確認する

純水と超純水の違いを、単に「フィルターを通した回数」で決めることはできません。また、超純水という名前だけで、すべての用途に共通する単一の水質が決まるわけでもありません。[1]

半導体製造では、対象となる製品や工程に合わせて管理項目と要求値を設定します。

半導体製造では何に使う?

薬液処理後のリンス

リンスは、ウェーハ上に残った薬液などを水で洗い流す処理です。薬液で汚染物や不要な膜を処理しても、その成分が残れば次の工程へ影響するため、適切に置き換えて除去します。

例えば、現像後のリンスでは、適用する現像方式に応じた液で残留成分を除去します。水系の現像プロセスでは超純水を使う場合がありますが、すべての現像方式で水が適するわけではありません。

超純水の役割は、必要な処理を行いながら、水から新たな不純物を持ち込むことを抑える点にあります。

薬液の希釈・調製

半導体製造で使う水系薬液の希釈にも超純水が使われます。原料薬品が高純度でも、混ぜる水に汚染物が含まれていれば、調製した薬液へ持ち込まれてしまうためです。[2]

なお、洗浄結果は水質だけでは決まりません。薬液の種類・濃度、温度、流量、処理時間、乾燥方法なども関係します。「超純水なら、どんな汚れでも落とせる」という意味ではありません。

水に不純物があると、何が困る?

透明に見える水でも、微小な粒子や溶けている成分は目で判断できません。半導体製造では、こうした微量成分まで管理します。

管理する対象問題になる理由の例
金属などのイオン表面汚染や電気特性への影響につながる
微粒子表面への付着によって加工不良や欠陥の原因になる
有機物表面に残り、後工程の膜形成などへ影響することがある
微生物微生物そのものや、その由来成分が汚染源になり得る
シリカ残留・付着などによる汚染を管理する必要がある
溶存ガス酸素や二酸化炭素などが、水質や表面の状態へ影響する

影響は、不純物の種類や量、付着する場所、加工対象によって異なります。粒子が1個あれば必ず製品全体が壊れる、と一律には言えません。工程で許容できる水準を決め、継続的に確認することが大切です。[1][2]

抵抗率18.2 MΩ・cmとは?

電気の流れにくさからイオンの混入を見る

水中のイオンは電気を運ぶため、イオンによる汚染が増えると、一般に電気が流れやすくなります。抵抗率〈比抵抗〉は、物質の電気の流れにくさを表す値です。

超純水の説明でよく使われるのが、**約18.2 MΩ・cm〈25℃〉**という数字です。理論上の純水に近い抵抗率を示します。[1]

ここで重要なのは、温度条件です。水の抵抗率は温度によって変わるため、数値を比較するときは測定温度や温度補償の条件も確認します。

また、純水にも水自身の解離による水素イオンと水酸化物イオンがあります。「イオンが完全にゼロだから電気を全く通さない」という説明は正確ではありません。

抵抗率だけでは、超純水の品質は分からない

抵抗率は重要ですが、それだけで有機物や粒子の量まで判断することはできません。例えば、抵抗率が目標に近くても、粒子の管理基準を満たしているとは限りません。

水質指標主に確認すること
抵抗率・電気伝導率イオンによる電気の流れやすさ
TOC〈全有機炭素〉有機物に由来する炭素の量
微粒子数指定した粒径以上の粒子の数
金属分析対象とする金属の微量な混入
溶存酸素水に溶けている酸素の量
シリカ・微生物など用途に応じた個別の汚染項目

TOCは、有機物を炭素の量として捉える指標で、有機物の種類をすべて特定するものではありません。粒子数も、対象粒径と水量の単位を合わせて比較する必要があります。

「18.2」という数字だけで合格とせず、必要な項目を組み合わせて確認することが、水質管理の基本です。[1][3]

超純水はどう作る?3段階で理解する

大規模な超純水設備は、前処理、一次純水製造、仕上げ処理に分けると理解しやすくなります。原水や要求水質によって、使う装置や順序は変わります。[2]

1.前処理:後段の設備が処理しやすい水にする

工業用水などに含まれる懸濁物や、後段へ影響する成分を取り除きます。ろ過などの処理を組み合わせ、後段の膜や樹脂への負荷を抑えます。

2.一次純水製造:不純物の大部分を減らす

RO〈逆浸透〉、イオン交換、電気脱イオン、脱気などを組み合わせ、水に溶けた成分を減らします。

ROは、圧力をかけて膜を通過させ、多くのイオンや有機物などを水から分離する技術です。イオン交換は樹脂を使ってイオンを除去し、電気脱イオンは電気を利用して脱イオンを継続する仕組みです。

3.仕上げ処理:残った微量成分をさらに減らす

ポリッシング、またはサブシステムと呼ばれる段階です。残った微量の不純物に加え、途中の設備部材などから持ち込まれた汚染も対象にします。

処理技術主な役割
RO〈逆浸透〉膜を使い、イオンや有機物などを幅広く低減する
イオン交換・電気脱イオン水中のイオンを除去する
UV酸化有機物を酸化分解し、後段の処理と組み合わせて低減する
脱気酸素や二酸化炭素などの溶存ガスを低減する
UF〈限外ろ過〉微粒子などを膜で除去する

UVを当てればすべての不純物が消えるわけではなく、UFですべての溶存イオンを除去できるわけでもありません。性質の異なる不純物に、それぞれ適した技術を組み合わせることで超純水を作ります。[2][4]

作った水を、汚さずに装置へ届ける

配管や容器も汚染源になり得る

高品質な水を製造しても、配管、継手、バルブ、容器などから成分が溶出すれば、使用場所での水質が変わります。

そのため、接液部材は耐久性だけでなく、低溶出性や清浄度なども考慮して選びます。採水して分析する場合も、容器や採水操作による汚染を区別しなければなりません。[1]

循環と排水回収は別の仕組み

超純水設備には、水を循環させながら処理する構成があります。単にタンクへ貯めておくのではなく、処理系を通して品質を維持する考え方です。[5]

ここで区別したいのが、供給系の循環と、使用後の排水回収です。ウェーハの洗浄などに使った水は、薬液や汚染物を含む可能性があります。そのまま清浄な供給系に戻すのではなく、回収対象を選び、必要な処理を行って再利用します。[6]

使用点で求める条件まで確認する

製造設備の出口の水質と、装置が実際に使う場所の水質は、同じとは限りません。使用点はPOU〈Point of Use〉とも呼ばれます。

装置へ供給する際には、水質に加えて必要な流量、圧力、温度なども確認します。きれいな水でも必要量を安定して供給できなければ、狙った処理を続けられないためです。

水処理設備は必要な品質の水を供給し、洗浄装置はその水や薬液を使ってウェーハを処理します。両者がつながって、製造工程を支えています。

超純水を支える企業と、水を再利用する取り組み

代表的な水処理企業として、栗田工業とオルガノがあります。栗田工業は超純水の製造・供給、運転管理、排水の回収・再利用などを展開し、オルガノは複数の分離精製技術や分析技術を組み合わせた超純水設備を提供しています。[4][6][7]

半導体工場の水使用量を考える際は、工場へ新たに入れる水、設備内で循環する水、回収・再利用する水を区別する必要があります。循環流量を、そのまま外部からの取水量と考えることはできません。

再利用でも優先されるのは、用途に必要な水質です。どの排水を回収できるかを見極め、処理設備やエネルギーの負担も含めて、安定供給と節水を両立させます。

超純水についてよくある疑問

DI水と超純水は同じ?

DI水は脱イオン水を意味します。イオンを除去したことを示しますが、その呼び名だけでは有機物や微粒子の水準までは分かりません。装置の表示名だけで判断せず、必要な水質仕様を確認します。

蒸留水なら超純水になる?

蒸留水は、蒸発させた水を冷やして得る水です。蒸留という製造方法だけで、半導体用途に求められるすべての水質項目を満たすとは限りません。[8]

超純水で洗えば、乾燥後に必ず跡が残らない?

水から持ち込まれる不純物を抑えることはできますが、表面に残っていた成分や乾燥条件なども結果に関わります。水質と洗浄・乾燥条件を合わせて考えます。

まとめ

超純水は、単に「とてもきれいな水」ではなく、半導体製造に必要な品質へ不純物を低減し、管理した水です。

  • リンスや水系薬液の希釈などに使われる。
  • 約18.2 MΩ・cmは25℃での理論純水に近い抵抗率であり、品質のすべてを示す値ではない。
  • RO、イオン交換、UV酸化、脱気、UFなどを組み合わせて作る。
  • 製造後も部材からの汚染に注意し、使用点まで品質を維持する。
  • 供給系の循環と、使用後の排水回収は区別する。

「何を減らすか」「どう測るか」「どう届けるか」の3つで捉えると、超純水が材料と装置の両方に関わる重要な技術であることが分かります。

参考資料

  1. 栗田工業:純水よりはるかに純度が高い超純水
  2. 栗田工業:超純水製造装置のしくみ
  3. ELGA:PURELAB Chorus 1〈抵抗率・TOCなどの水質管理〉
  4. オルガノ:純水・超純水精製技術
  5. オルガノ:FP-αシリーズ製品フロー〈循環構成の一例〉
  6. 栗田工業:電子産業向けソリューション
  7. 栗田工業:超純水供給
  8. 栗田工業:純水とは?その性質や製造方法について

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