リソグラフィとは?露光・現像の仕組みとArF・EUVの違いを図解

製造工程

半導体の中には、非常に細かなトランジスタや配線が作られています。しかし、ウエハー全体を同じように削ったり、同じ場所へ材料を入れたりするだけでは、回路は作れません。

「どこを加工し、どこを残すか」を細かく決める必要があります。そのためのパターンを作る工程が、リソグラフィです。

この記事では、レジストを塗ってから露光・現像するまでの流れ、光で形を残す仕組み、ArF・EUVなどの露光方式の違いを解説します。さらに、微細な形を正しい位置に作る難しさと、それを支える装置・材料の役割も整理します。

リソグラフィとは

リソグラフィは、ウエハー上へ微細なパターンを形成する技術です。 半導体製造では、光に反応する材料「フォトレジスト」を使い、後の加工で保護する場所と、加工する場所を分けます。[1][2]

リソグラフィには複数の方式がありますが、この記事では、光を使う「フォトリソグラフィ」を中心に説明します。

例えば、薄い膜を一部だけ削りたい場合、最初に膜の上へレジストを塗ります。そして、光と現像液を使ってレジストに開口部を作り、その形に合わせて下の膜を加工します。

壁を塗装するとき、塗りたくない場所をテープで覆うと、必要な部分だけに色を付けられます。半導体でも、残したレジストが保護材となり、加工する範囲を分けるという考え方は似ています。

露光との違い

露光は、レジストへ光を当てて、パターンに対応する変化を与える工程です。一方、フォトリソグラフィは、レジスト塗布、露光、現像などを含む一連の工程を指します。[1]

用語主な役割
リソグラフィ加工場所を分けるための微細なパターンを形成する
露光レジストにパターンに沿った光を当てる
エッチングレジストなどで覆われていない部分の膜を取り除く

露光しただけで、シリコンや金属が回路の形に削られるわけではありません。 現像してレジストの形を作り、エッチングやイオン注入などにつなげます。イオン注入は、選んだ領域へ元素を入れ、半導体の電気的な性質を調整する工程です。

工程の流れ

まず、フォトリソグラフィの代表的な流れを見てみましょう。処理の順序や必要な熱処理は、レジストの種類や下地の材料によって異なります。[3]

工程何をするか目的
表面の準備洗浄、脱水、必要に応じた表面処理レジストを塗り、密着させやすい状態にする
レジスト塗布ウエハーへレジストを薄く広げる光に反応する膜を作る
露光前ベーク塗布した膜を加熱する主に溶剤を減らし、膜の状態を整える
露光パターンに沿って光を当てる現像時の溶けやすさに差を作るきっかけを与える
露光後ベーク材料に応じて露光後に加熱する必要な化学反応などを進める
現像・リンス・乾燥溶ける部分を除き、洗い流して乾かすレジストのパターンを残す

塗布前の表面処理

ウエハー表面に水分や汚れが残っていると、レジストの密着や塗布状態に影響します。そのため、洗浄や脱水を行い、必要に応じてHMDS処理などで表面を整えます。HMDS処理は、レジストとの密着性を改善するための表面処理の一つです。

ただし、すべての下地やレジストに同じ処理を行うわけではありません。使用する材料に合った前処理が必要です。

塗布と露光前ベーク

レジスト塗布では、液をウエハーへ供給し、回転させて広げる「スピンコート」がよく使われます。回転条件やレジストの性質などを調整し、狙った厚さの膜を作ります。[3]

塗布した直後の膜には溶剤が残っているため、加熱してその量を減らします。この露光前の熱処理が、ソフトベーク、プリベーク、PAB〈Post Apply Bake〉などと呼ばれる工程です。

膜を厚く塗ればよいというわけではなく、後の露光・現像や加工に適した厚さと均一性が求められます。

露光後ベークの役割

露光後に行う熱処理は、PEB〈Post Exposure Bake〉と呼ばれます。露光前のベークとは、行うタイミングも主な目的も異なります。

例えば、化学増幅型レジストでは、露光をきっかけに発生した酸が反応を進めます。PEBは、その酸を利用した反応を進め、現像液への溶けやすさの差を作るために重要です。[4]

反応の進み方は温度や時間に影響されるため、加熱条件のずれはパターン寸法のずれにつながります。PEBの要否や目的は材料によって異なり、すべてのレジストが同じ反応を使うわけではありません。

熱処理の後には、次の処理へ適した温度に戻す冷却も重要です。実際の装置では、塗布・加熱・冷却・現像の条件を組み合わせて管理します。

現像から次の加工へ

現像後に残ったレジストは、下地を加工するときのマスクとして働きます。例えばエッチングでは、開口した部分の膜を取り除き、レジストの形を下の膜へ転写します。加工後には、役割を終えたレジストを除去します。[2]

こうした処理を、成膜や洗浄などと組み合わせて繰り返し、トランジスタや配線を作り込みます。一回の露光・現像だけで、半導体全体が完成するわけではありません。

露光と現像の仕組み

ここで、光を当てることが、なぜレジストの形につながるのかを見てみましょう。

マスクはパターンの原版

フォトマスクは、転写したいパターンを持つ原版です。レジストはパターンを受け取る材料、露光装置は光を使ってそのパターンを写す装置と考えると、役割を整理できます。[5][6]

代表的な縮小投影方式では、マスクのパターンを光学系で縮小し、レジストを塗ったウエハーへ投影します。さらにウエハー上の位置を変え、同じパターンを繰り返し転写します。

ただし、光の通り方は方式によって異なります。一般的な透過型マスクを使う方式ではマスクを光が通りますが、EUVでは反射型マスクを使います。「すべての露光で、光がマスクを通り抜ける」と考えないことが大切です。[9]

溶けやすさで形を作る

レジストでは、露光と必要な熱処理によって、光が当たった部分と当たらなかった部分の溶けやすさに差が生まれます。その差を現像液で形にします。[3][4]

種類光が当たった部分現像で主に除かれる部分
ポジ型現像液に溶けやすくなる光が当たった部分
ネガ型現像液に溶けにくくなる光が当たらなかった部分

同じ明暗のパターンで露光しても、ポジ型とネガ型では残る形が反対になります。

大切なのは、光がレジストを直接削るのではなく、材料の性質を変え、現像によって不要な部分を除くことです。「露光で変化を与える」「現像で形を取り出す」と分けると、理解しやすくなります。

露光方式の違い

露光には、波長の異なる複数の光が使われます。波長は、光の波の山から次の山までの長さです。ほかの条件が同じなら、波長が短いほど細かなパターンを写しやすくなります。[7]

方式主な波長押さえたい特徴
i線365nm比較的大きなパターンを作る工程などで使われる
KrF248nm深紫外線を使う方式の一つで、幅広い製造工程を支える
ArFドライ193nmレンズとウエハーの間を液体で満たさずに露光する
ArF液浸193nmレンズとウエハーの間に水を入れ、解像性能を高める
EUV13.5nm極端紫外線と反射光学系を使い、特に微細なパターンを形成する

nm〈ナノメートル〉は10億分の1メートルです。表の数値は光の波長であり、そのまま作れる回路の線幅を表しているわけではありません。

KrFやArFはDUV〈深紫外線〉を使う代表的な方式です。EUVはExtreme Ultravioletの略で、日本語では極端紫外線と呼びます。

ArF液浸の工夫

ArF液浸は、ArFドライより短い波長へ変える技術ではありません。どちらも波長193nmの光を使います。

レンズとウエハーの間に水を入れることで、光学系の開口数〈NA〉を高め、同じ波長でも細かなパターンを写せるようにします。NAは、光を集めて像を作る光学系の能力に関わる指標です。[8]

EUVは何が違う?

EUVは波長13.5nmの光を使いますが、ArFの光源を取り替えるだけでは実現できません。

EUV光は空気や多くの材料に吸収されやすく、通常のガラスレンズを通して像を作る方法が使えません。そのため、真空環境の中で、反射型マスクと特殊な多層膜ミラーを用いて光を導きます。[8][9]

光源では、スズへレーザーを当ててプラズマを作り、そこから出るEUV光を利用します。光源、反射光学系、真空、精密な位置制御を組み合わせる必要があります。[7]

さらに、光を集める能力を高めるHigh-NA EUVもあります。通常のEUVと光の波長は同じで、主に光学系のNAを高め、より細かなパターン形成を目指す技術です。[8]

新方式だけを使わない理由

一つの半導体でも、すべての層が同じ細かさを必要とするわけではありません。細かさに加えて、生産性やコストも考え、複数の露光方式を使い分けます。[11]

EUVが使われる製品でも、すべての層をEUVで作るとは限りません。新しい方式が登場すると、従来方式が一斉に不要になる、という関係ではないのです。

微細化の難しさ

微細なパターンを作るには、「細く写せること」だけでは足りません。狙った寸法を、狙った位置に、ウエハー全体で安定して作る必要があります。

細かい形を見分ける

隣り合った線の間隔が狭くなると、光の回折の影響などで、像が分かれにくくなります。回折は、光が開口部などを通る際に広がる性質です。

どこまで細かな形を分けて写せるかを表すのが、解像性能です。これは光の波長だけでなく、NA、マスク、レジスト、プロセス条件などにも関係します。[8]

ピントを合わせる

写真と同じように、露光でもピントがずれると像がぼやけます。ウエハー表面の高さの変化や反りなどに対応しながら、適切な位置へ像を作らなければなりません。

そのため、露光装置の位置制御に加え、計測結果を使った補正も重要です。[10]

前の層に位置を合わせる

半導体では、すでに作ったパターンに合わせて、次のパターンを重ねます。この位置合わせの精度が「重ね合わせ精度」、英語でオーバーレイです。[10]

例えば、下の配線につなぐ穴の位置がずれると、正しく接続できない原因になります。穴が細くきれいに作れていても、位置が合っていなければ役割を果たせません。

微細化が進むほど、寸法と位置の両方を厳しく管理する必要があります。計測・検査で結果を確認し、露光や前後工程の条件へ反映することが、安定した製造につながります。

装置と材料の役割

リソグラフィは、露光装置だけで成立する工程ではありません。材料の準備、塗布、熱処理、露光、現像、計測がつながって、狙ったパターンが得られます。

装置・材料担う役割関連企業の例
露光装置光学系と精密な位置制御でパターンを転写するASML、ニコン、キヤノン
コータ・デベロッパレジストの塗布、熱処理、現像などを行う東京エレクトロン、SCREEN
フォトレジスト露光によって現像液への溶けやすさが変わる材料東京応化工業
フォトマスク転写するパターンの原版となるDNP〈大日本印刷〉
計測・検査装置寸法、重ね合わせ、欠陥などを確認するASML、日立ハイテク

企業例は、それぞれの役割を理解するための例です。同じ企業でも複数の装置・材料を扱い、同じ分野でも対応する方式や用途は異なります。[1][2][5][6][10][12][13][14][15]

例えばコータ・デベロッパは、露光前の膜の状態を整え、露光後には現像して形を完成させます。露光装置と連携するため、前後の温度や処理条件も含めた管理が必要です。装置内部の仕組みは、コータ・デベロッパの記事で詳しく解説しています。

また、日立ハイテクのCD-SEM〈測長SEM〉は、電子線を使って微細なパターンの寸法を測る装置です。露光する装置と、出来上がったパターンを測る装置では、役割が違います。[15]

まとめ

リソグラフィは、後の加工で「どこを加工し、どこを保護するか」を分けるためのパターンを作る技術です。光を使うフォトリソグラフィでは、レジスト塗布、露光、現像などを組み合わせます。

露光でレジストに変化を与え、現像で形を取り出し、その形をエッチングなどで下地へ転写します。露光だけで回路が完成するわけではありません。

ArF液浸やEUVは、より細かなパターン形成を支えますが、必要な細かさや生産性、コストによって方式は使い分けられます。また、微細な寸法に加え、ピントや重ね合わせの管理も欠かせません。

「材料の性質を変える」「形を作る」「次の加工へつなぐ」という流れを押さえると、露光装置、コータ・デベロッパ、フォトレジスト、エッチングの関係を理解しやすくなります。

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参考資料

企業・研究機関の公式技術資料を中心に確認しています。確認日:2026年10月25日。工程や材料の説明は代表例で、実際の処理条件は用途や材料によって異なります。

  1. 東京エレクトロン:製品・サービス〈半導体製造プロセス〉〈塗布・露光・現像とエッチング、コータ・デベロッパ〉
  2. 東京応化工業:半導体製造前工程〈レジスト、現像、パターンを用いた加工〉
  3. リソテックジャパン:フォトリソグラフィの概要〈表面処理、スピンコート、ベーク、ポジ型・ネガ型〉
  4. ATOMICA:放射線照射によるリソグラフィの原理と応用〈化学増幅型レジストと酸触媒反応。2007年2月の資料のうち原理説明を参照〉
  5. DNP:半導体製造の裾野を広げ、誰もが快適で便利な社会を支える「フォトマスク」〈パターンの原版としての役割〉
  6. ASML:Lithography principles〈投影、縮小、ウエハー上での繰り返し転写〉
  7. ASML:Light & lasers〈i線・KrF・ArF・EUVの波長、EUV光源〉
  8. ASML:Lenses & mirrors〈NA、液浸、EUVの反射光学系、High-NA〉
  9. ASML:EUV lithography systems〈EUVの光学系と反射型レチクル〉
  10. ASML:Measuring accuracy〈重ね合わせ、フォーカス、計測結果のフィードバック〉
  11. ASML:DUV lithography systems〈必要な層・用途に応じた方式の使い分け〉
  12. SCREEN:半導体製造の塗布・現像工程にかかる電力消費量を減らせ〈コータ・デベロッパの機能〉
  13. ニコン:半導体・FPD〈半導体露光装置と計測技術〉
  14. キヤノン:キヤノングループの半導体製造装置〈半導体露光装置の提供〉
  15. 日立ハイテク:CD-SEM〈測長SEM〉とは〈レジストなどの微細パターンの寸法計測〉

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